どんな組織でも人材が揃わなければ、前には一歩も進めません。
特に銀行は今も昔も「人」が基本です。銀行のような労働集約型産業では、一定レベルの人材が常に求められます。既にそのレベルにある人を中途採用するパターンも、昨今では多くなりましたが、やはり圧倒的に多いのは新卒を採用するパターンです。
しかし学校を卒業したての人間に、即戦力を求めるのは無理なので、スキルアップが必要です。
ここに研修の必要性があります。
これは銀行としては共通のことなので、どこの銀行でも研修体系は、よく似たものになっています。
すなわち、
・学生を社会人にするのを目的とした「新人研修」
・銀行事務を習得する「事務研修」
・営業スキルを身につける「営業研修」
更に
・入行後5・6年目を対象の「中堅職員研修」
・50歳以降に受ける「セカンドキャリア研修」(別名たそがれ研修)
といった年次別研修があります。
また全員対象ではありませんが新任役職者対象の「管理職研修」や新任支店長対象の「部店長研修」のような階層別研修などが、それぞれの対象者に対して課されます。また人によっては外部派遣や他行トレーニーなどもありえます。
こう見ると銀行は人育成のために、相当の手間暇をかけていることが分かります。しかも銀行は研修対象者に研修中の給料は払っていますが、当人にはまったく稼いでもらっていない状態となります。
これが一人や二人ならともかく、銀行全体でみると常時何百人と言う人間がそうなのです。しかしそれでもまったく平常と変わらない業務を行うわけですから、良く考えればものすごい話です。
私もある意味こんな研修漬けの銀行員生活でしたが、数ある研修の中でどの研修が最も印象に残っているかと言えば、私の場合は「新人研修」です。私の入行は1970年代終盤で、同期は77名でした。当時は就職氷河期と呼ばれており、今から考えると本当によく入行を出来たものです。
実はその時の同期は内定時点では78名だったのですが、なぜか入行式当日に1名来ないという珍事が発生し、77名ということになりました。入行式が終わってそのまま研修所に直行です。一騎当千のつわもの達(本人たちは大まじめにそう思ってました)が、丸一週間缶詰となり、合宿形式で研修を受けました。
この研修が一番印象に残っています。何しろ全員が社会人としても銀行員としてもド素人です。何をするにも一致団結せねば一歩も前に進みません。この点が明らかに他の研修と際立って違っていました。
この体験がベースにあるせいか同期の人間とはその後も、会えば立場や環境を越えて腹を割って話し合える。そんな関係が続きました。
あれから幾星霜、今でも街中で年配者とすれ違うと、「あっ、この人は!銀行OB,OGだ!」とピンとくる瞬間があります。
2017/11/22