前回に引き続いてのお話となります。
取引相手からT.T.決済を断られた時、他の手段には何があるか?今回はこのテーマの輸出版です。
T/T決済を変えられてこちらが困るというのは、前受金で取引している場合だと思います。すなわち船積を代金回収後にしているということです。
前金からの条件変更はどんな結果となっても、輸出側には改悪とならざるを得ません。
ただ先方の申し出を聞く余地があるのなら、思案の余地はあります。
まず手始めは一覧払L/Cの利用です。一般にL/C取引は輸入者にとって銀行与信や手数料の点で、負担が大きいため輸入者は敬遠しがちです。しかし輸出者として全額前金を引っ込めるのであれば、第一に主張すべき手段と考えます。
輸出側の銀行手数料もT/T決済に比べて高くなりますが、別途輸入者に負担を求めるのも考えられます。(単純に輸出価格への上乗せでは競争力が落ちかねません)
この方法の利点は、資金回収が確実な点です。輸入側の銀行(L/C発行銀行)は、一定の条件、すなわちL/C条件通りの船積書類を呈示されると、輸出側に支払を必ずしなければなりません。この条件には輸入者の業況やマーケットクレームは、一切考慮されません。端的に言えば必ず払ってもらえるということです。これをまず第一の手段とします。
次に考える方法は、D/P・A/Sの取引です。D/PというのはDocuments against Payment の略で、日本語では「支払渡し」と呼びます。L/C(信用状)を用いない取引の代表格です。輸入者の負担はL/C取引よりはよほど軽くなります。その点で輸入者は受け入れやすいかもしれません。
ただこの取引は、輸入側銀行の支払約束はありませんので、代金回収には不安が残ることになります。そこで代金回収をより確実にするため、「輸出手形保険」を掛けることが良く行われます。この保険の仕組みの説明は別の機会に譲りますが、保険を付ける狙いは明確でこの保険があれば、万一の時は為替手形金額の95%が、保険金として支払われます。
しかもこの保険は輸入者の不払いだけでなく、相手国の戦争や内覧、輸入制限や禁止といった場合でも、保険金支払いの対象となります。この点に着目して輸入者の信用に問題が無くても、輸出手形保険を掛ける場合があります。なお保険料は輸入者や輸入国によってまちまちですが、大体、為替手形金額の1%前後です。これを第二の手段とします。
さて前回お話しした「国際ファクタリング」ですが、間に入るファクタリング会社は一般的に立替払いをしないため、代金回収はL/C取引やD/P・A/Sに比べて遅くなってしまいます。また手数料はすべて輸出者が負担するため、その点でもお勧めとは言いかねます。
いずれにしても、どの方法をとるにせよ貨物の所有権を、いつの時点まで輸出側が確保できるのか、代金回収と所有権の輸入者への移転のズレはどの程度なのか、この辺を検討したうえで先方と交渉する必要があると思います。
2017/08/31