先日、輸入業者の貿易担当者とのミーティングで、取引相手からT/T決済を断られた時、他の手段には何があるか。という質問を受けました。|T/T決済を断られたらどうする?輸入業者の場合

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公開日:2017.08.25

T/T決済を断られたらどうする?輸入業者の場合

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先日、貿易担当者とのミーティングで、取引相手からT/T決済を断られた時、他の手段には何があるか。

という質問を受けました。

相手の言い分を聞いてしまうと、取引条件が悪化する可能性が大です。

よってこちらの利益も確保しつつ、先方も納得できる方法をアドバイスしてみました。

便宜上輸出と輸入に分けて考えてみます。(輸出は次回に回します)

質問のあった会社は輸入業者でした。事情を聞いてみますと、その会社は好調な販売を背景に、海外の輸出先に対しても強気の対応をしており、これまでは全額後払い送金で決済しているとの事です。ところが輸入量が増えたため、先方の資金繰りが窮屈になり、一部でもよいので前金にしてほしいという申し出があったそうです。

この会社としては一部前払いも可能だが、どの程度前払いするか、いつの段階で前払いするのか、判断するのは面倒だし、なにより相手の言い分をそのまま認めるような形は避けたい。

こんな気持ちで悩んでいたそうです。そこで私からお話ししたのは次の二種類の方法です。

其の一番目はD/P・A/Sの取引です。D/PというのはDocuments against Payment の略で、日本語では「支払渡し」と呼びます。L/C(信用状)を用いない取引の代表格です。輸入者はL/C取引と違って事前準備は不要で、輸出者からの船積書類が取引銀行に到着したときに、代金を支払うだけで良いシステムです。

代金支払いと引き換えに船積書類が手に入りますので、この段階で輸入商品は確保出来る事になります。銀行手数料も外国送金ほどではありませんが、L/C取引に比べればはるかに安くて済みます。さらに輸入者の取引銀行は、決済手続き代行者のようなものなので、与信が発生するわけではないので、手続きは至極スムーズです。

ひるがえって輸出者側から見ると、輸出者の取引銀行が買取りに応じれば、割引利息は発生しますが、その段階で資金は回収できます。買取が無理でも輸入側の銀行が、船積書類と引き換えに確実に代金を回収してくれるので、後受の送金に比べ早く確実に資金が回収できることになります。

二番目にお話ししたのが「国際ファクタリング」です。国内取引でもファクタリング会社を使って、代金回収することはよくあると思いますが、それの国際版という認識でいいと思います。

このシステムでは、輸入者は船積書類を輸出者から直接受け取ります。一方支払は間に入ってくれたファクタリング会社に支払います。通常は船積から180日までの間に決済日を定めますので、輸入者はその日に決済すれば良いことになります。

またこのスキームでの手数料はすべて輸出者が負担するため、輸入者には何も負担は発生しません。D/Pに比べると良い事が多いように思えますが、輸出者が輸入国で発生する手数料も負担するため、どうしても輸出者の負担が多くならざるを得ません。

またファクタリング会社は資金の立替を原則しませんので、輸出者にとって今より早く資金回収ができるとは限りません。

以上、二つお話ししましたがいずれも一長一短があり、私の話した担当者は、会社に持ち帰って検討するとの事でした。何れの場合でも輸出者との折衝が重要となるので、良く連絡を取り合うようにアドバイスしました。

2017/08/25

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