「お宅の銀行の手数料は高い!」
銀行員なら一度や二度、必ず聞かされるフレーズです。そんなことは無い。他行と比べて割安。
こう思っていても、別の人から同じことを言われていました。
世間一般の認識でも「銀行手数料は高い」が相場のようです。なぜこんなことが起こっているのでしょうか。
今回はこの辺のところを考えてみます。
銀行の手数料はもちろん銀行が提供するサービスへの対価です。サービス内容が同じであっても、各銀行の事情は異なるので、様々な水準の手数料が有っていいはずです。ところが銀行をいくら見回しても、驚くほどその水準は近似しています。
どうやら高い。安い。を議論する前に、なぜ同じような水準なのかを、見ていく必要がありそうです。
まず銀行に対する法的規制から見ていくと、銀行は銀行法という法律によって、その内容が細かく規定されています。国から免許を取得しない限り、「〇〇銀行」と名乗ることすらできません。新参者は簡単には参入できないようになっています。相手が限られれば、競争が起きにくいのは道理です。
また今でこそ影を潜めましたが、国の銀行に対する方針は「護送船団方式」と呼ばれるものでした。最も経営体力の乏しい銀行が生き残れるように手数料や貸出金利が運営されるのを容認していました。(預金金利に至っては「規制金利」と呼ばれ、各銀行一律でした。)
そんな状況ですから、銀行としては競争する必要が無いので、銀行全体が右にならえとなっていました。さすがに今ではそんなことは無いのですが、この「右にならえ」精神は生き残っており、手数料の下方硬直性と相まって、高止まりしている印象があります。
また手数料の算出根拠として良く使われるのが、「コスト積上げ方式」とよばれるものです。この方式は提供するサービスに掛かる費用を計算して、それに適正利潤を上乗せして算出します。銀行にとっては都合が良く、それなりに説得性もあるのですが、これだけ社会全体に自由競争が浸透すると、銀行優先の論理が受け入れられるか正直疑問です。
加えて銀行というところはお世辞にも情報開示に積極的ではないので、このコスト積上げに関する情報開示も徹底されておらず、手数料自体がブラックボックス化している嫌いがあります。
しかし金融庁の強力な指導もあり、全体の流れも変わりつつあります。今後は徹底した情報開示がされていくでしょうし、(保険商品の窓口販売手数料のように)それに加え他業態からの参入により、競争もより活発化すると思います。
早ければ来年にも予定されている、フィンテック採用による海外送金の内容一新が、銀行手数料改革の先駆けになるかもしれない。(現行手数料の1/10もあり得ます!)そんな気がしているのは、私だけではないはずです。
2017/08/18