外為をやっていると「税関が調査に来た!」という話をよく聞きます。先日もあるメーカーの海外営業担当と話をする機会があり、「税関の事後調査」の話になりました。
その人はベテランなので無難に切り抜けたとの事で、こちらとしても「そうですか。大変でしたね。」で終わりでした。
しかし貿易実務に詳しくない人や、貿易を始めて間もない人だと、このベテランさんのように上手くいきません。税関への対応がぎくしゃくして、お金と貨物の辻褄が合わなくなってしまいます。
こんな時、税務調査だと税理士さんが応援してくれます。税関の事後調査では通関士さんの出番なのですが、気軽に立ち会ってくれる人はなかなかいないようです。
そこで銀行担当者にもお鉢が回ってきます。しかし銀行は矢面に立てません。対応には限界があります。そんな時にどうしたらいいのか。今回はこの辺をお話しします。
銀行にサポートを求めるときにはポイントがあります。
一つ目は銀行の立ち位置です。これを理解すると銀行にものが頼みやすくなります。税務調査では側面調査であっても、銀行は調査の当事者です。ですから調査は銀行に直接入ってきますし、直接銀行にあれこれお尋ねもします。
対して税関の事後調査では、銀行は調査当事者ではありません。その結果として調査が銀行に入ることもありません。
銀行はあくまでも黒子です。何か頼むにもお願いベースとなります。これが第一点目です。
次に二点目ですが、それは調査目的についてです。税関の事後調査の目的は、輸入と輸出で異なるのですが、銀行と接点が生じるのは主として輸入の場合です。輸入調査では、関税や消費税の過少申告や申告漏れが調査対象です。この時実際の資金の動きは、銀行口座で判断する事が多いです。
皆さんの手許資料で納得してくれた場合はいいのですが、納得しないと追加資料を求められます。この要求に対して、「出来ません」では済ませられませんので、銀行に取引内容の確認資料の調査依頼をすることになります。この資料すぐには揃いません。この点注意が必要です。これが二点目です。
三点目は調査担当者の心証です。税務調査の場合、多くは事前調査済みであり、かなりの確率で不備指摘がなされます。
調査対象への心証は、黒が前提と考えられます。それに対して税関の事後調査はあくまでも調査です。結果として黒となっても事前の心証は、特にかたよっていないようです。銀行に資料を依頼するときでも、事情を正確に説明して、関連資料をすべて依頼して頂ければと思います。
最後になりますが輸出関連での事後調査では、税関の目の付け所は不正輸出です。ごくまれに銀行への提出書類の控えを求められますが、控えが無いからと言って銀行に照会しても、銀行は輸出の場合は提出された書類は海外に発送するか、企業に返戻して何も残っていないのが普通です。この点注意が必要です。
2017/08/12