日経紙上で扱いは小さいながら、私にとってはショッキングな記事が出ていました。来春にも三菱東京UFJ銀行の行名から、東京が消えるというのです。
東京とは地名ではなく同行の母体行の一つ、「東京銀行(略して東銀)」のことです。来春からはこの名前が消えるというわけです。
外為をやっている人間なら、「横浜正金銀行」の流れを引く東京銀行(Bank of Tokyo)の、凄さを知らない者はいません。
質の高い外為サービスを提供することができる「東銀」は、我々にとって最大の強敵で、どんな好条件を出しても、頑として東銀から外為を移してくれない。そんな鉄板先が何社もありました。
それほど東銀と外為の結びつきは強いのです。実は我々も「東銀」の外為には敬意を払っており、毎日の公示相場では東銀のレートと異なるものを、公表するには勇気がいりました。
銀行によっては東銀レートの発表後、自行レートを公示するという、「後出しじゃんけん」まがいの所もあったぐらいです。
このような話は国内にとどまりません。海外の銀行も日本の銀行と協議したいときは、まず東銀に声をかける。というのが不文律でした。それほど「東銀」は信用されていたわけです。
バブル崩壊後の金融再編時、「東銀」は最強の花嫁候補として、我々の注目の的でした。そんな「東銀」は1996年に旧三菱銀行と合併し、東京三菱銀行となったのはご承知の通りです。
さらに2006年には旧UFJ銀行が加わり、三菱東京UFJ銀行となり現在に至ります。和文名では三菱が先頭に出ていますが、現在でも英文名は「The Bank of Tokyo- Mitsubishi UFJ,LTD.」です。
また外国送金に使われるSWIFTコードは旧東銀のものが、現在でもそのまま使用されています。
こんなことからも「東銀」ブランドの強さが偲ばれます。
そんななかで行名から「東京」を消すというのは、もう「東銀」ブランドに頼らなくても良い。という自信の表れと思えます。ブランド戦略として「東銀」は現在でも有効としても、現実の問題としてすでに合併から20年余が経過し、旧東銀の人材も大部分が第一線を退いている現状では、このような動きは当然ともいえます。
同じメガバンクの新行名でも、「さくら住友銀行」あるいは「住友さくら銀行」とすればよいのに、三井を復活させて(旧住友側の強い要請?)、結果として混乱してしまった三井住友銀行に比べ、三菱の人たちのしたたかさには、感服するしかない。というのが、正直な気持ちです。
2017/05/18