最近、海上輸送でサレンダーB/Lの、取り扱いが増えてきました。輸出者、輸入者双方にとってメリットがあるこの制度、銀行に話を持ち込むと、途端にトーンダウンしてしまうようです。
なぜ銀行はサレンダーB/Lを嫌がるのか。今回はそのお話です。
元々サレンダーB/Lは海上輸送の高速化により、「海外から貨物が来た!船荷証券は来ない!通関できない!」こんな話が頻発するようになったため、これを解消するために考え出されたものです。(ちなみにこの書類の来ない困った状態を、「船荷証券の危機」と呼びます。)
この制度は海上輸送の高速化に対応したものとして、一定の効果があるのは、私のような銀行関係者でも理解できます。ただ銀行の都合で考えると、風向きが少々変わってきます。
このB/Lは銀行で取扱出来ない可能性があります。正規に発行されたB/Lなのになぜ? 不思議に思われるかもしれません。しかしここに問題点があります。具体的には次の2点が主要なものです。
一点目はサレンダーB/Lの持つ非有価証券性です。
銀行で初めて外為を担当すると、必ず教わることの一つに、「B/Lは有価証券。Airway Bill (AWB)は証拠証券。」というのがあります。この短文の持つ意味は、B/Lすなわち船荷証券には、貨物そのものの財産的価値がある。それに対してAirway Billは貨物の受取事実を表したものであり、財産的価値は無い。(つまり受取の証拠にしかならない。)ということです。
言い替えると、銀行から見ればB/Lには担保価値がある。しかしAirway Billには担保価値が無い。B/Lであれば万一の時には、貨物を処分して資金を回収できる。よってB/Lを確保すれば安心である。こういうロジックになります。
これは輸出側銀行でも、輸入側銀行でも同じことです。ところがサレンダーB/Lになると、B/Lは輸出地ですべて一旦、船会社に返却されてしまいます。そして再度輸出者に交付されたB/Lには、「Surrendered」と表示されるのが普通です。一見すると何の変化もなさそうですが、この一連の手続きでB/Lの有価証券性は消滅しています。
これは銀行にとっては由々しきことで、担保価値のないものを、買い取るわけにはいかない!こういう判断につながるわけです。
二点目はL/C(信用状)取引の場合によく見られるのですが、銀行によってサレンダーB/Lへの対応がまちまちなのです。まるで認めないという銀行もあれば、普通のB/Lと同じように扱う銀行もあります。これはL/C取引の根拠となる信用状統一規則に、
その定めがない点が大きく、結局対応は都度当事者間での特約でやりましょう。こんな形になります。
こんな問題点のあるサレンダーB/Lですが、Seaway Bill(海上運送状)の普及が今一つの現在、その利便性は高く評価できると思います。これは全くの想像ですが、次の信用状統一規則ではサレンダーB/Lについて、言及する可能性は充分にあると思います。
参考コラム:
サレンダーBLをうまく活用して貿易実務をスムーズに!
2017/04/27