輸出代金の回収条件の話です。
一部前金(現金or被仕向送金)、残金は船積後○○日以内の
T.T.送金というのはよくあるパターンです。
ところが新規の取引先と、いきなり後払い条件では、
不安を抱えて船積することになります。
と言って前金部分をむやみに増やすと、
相手がいい顔をしてくれません。
悩ましい状況です。
こんな時よく用いられるのが信用状です。
今回は信用状取引が、輸出者にとって有利なのか?
と言う点を見ていきます。
外為の世界では「信用状統一規則」と呼ばれる、
世界的に認められたルールがあります。
このルールは貨物の船積から代金決済まで、
当事者が安心して取引できるように定められたものです。
輸出入者・銀行等のすべての関係者は、これに従うのが一般的です。
(以下信用状統一規則をUCP600と呼びます)
このUCP600は全部で39条ですが、内容はなかなか難解です。
コンメンタール(法文の解説書)が出版されるぐらいです。
ただしUCP600のどこにも「輸出者が有利!」とは、
書いてありません。(当たり前かも・・・・)
けれどもよく見ると、いくつかヒントがあります。
ヒントその1 (第15条にあります)
信用状取引では代金決済をしてもらうために、
船積書類を銀行に提出する必要があります。
この書類と信用状条件との一致が、代金決済の条件です。
つまり書類が完璧であれば、提出時点で代金回収は確約されます。
輸出者にとって有利な条項と言えるでしょう。
この点に着目して昔のテキストには「石ころ」を積んでも、
船積書類が完璧なら、輸入サイドは決済しなければならない。
と書いてあるものまでありました。
(これ本当ですが、売買契約上は不完全履行です。)
ヒントその2 (第16条です)
船積書類を信用状の発行銀行が受け取ってから、
一定期間何もしなければ(具体的には輸出者の銀行に対して、
提出された書類と信用状条件の不一致を、
指摘する連絡をしない事です)、
たとえ書類が完璧でなくても、決済しなければならなくなる。
という決まりがあります。
一定期間とは発行銀行が書類を受け取った翌営業日を起算日として、
5営業日後までの期間です。
(だいたい暦日ベースで一週間から十日後のイメージです)
これは決済の遅延を防ぐために設けられたものです。
これも輸出者にとって有利な話です。
ヒントその3 (第35条です)
輸出者サイドの銀行が船積書類を買い取って後、
信用状発行銀行に向けて船積書類を発送するのですが、
信用状発行銀行に到着するまでの間に、
輸入者サイドの責任に依らずに紛失してしまった場合でも、
輸入者サイドは支払いをしなければなりません。
天災のような不可抗力であってもそうです。
これも輸出者の権利を保護することになります。
以上みてきましたように、
複数の条項で輸出者が、有利に取り扱われています。
貿易取引では、
とにかく輸出者が貨物を出荷してくれなければ、
何も始まりません。
UCP600は、輸出者が安心して出荷できるように、
円滑な取引構築を常に念頭に置いています。
もし身近で信用状取引の話が出たら、
食わず嫌いにならずに、
前向きに検討されることをお勧めします。
2016/3/28 貿易実務の情報サイトらくらく貿易