『こと外為の話になると「うちの銀行」は、対応のスピードも遅く、
手数料も他行に比べて高い気がする。
何か原因があるのだろうか。【その2】(中小企業のオーナーより)』
今回も前回に引き続いて外為全体のお話です。
前回は取引銀行が外為に関して、
自前の処理か他行に任せているのか、
その見分け方を中心にお話ししました。
今回はそれを受けて、
速く処理してもらうコツ、安くあげるコツを、
お話ししたいと思います。
外為取引は大きく分けて、輸出と輸入サイドに分かれますが、
ここでは両方含めてお話します。
3.速く処理してもらうコツ (この3.は前回からの通番です。)
この項目で、ひとつ予めお伝えしたいことは、
銀行を急がせても、余り意味が無いという点です。
どこの銀行もそうですが、外為はチームプレーです。
一人の担当者で完結することはありえません。
目の前の担当者を急がせても、
後工程の担当者が同様に急いでくれるとは限りません。
外為実務では、急ぐときに「至急」を意味する「Urgent」を使います。
急ぐ場合は店頭で、「Urgent」扱いと依頼するわけです。
こう頼まれると銀行担当者は心得たもので、
赤い付箋などで「Urgent/至急」表示を付けてくれます。
頼んだ方はこれで一安心なのですが、
実は、一歩裏に回ると受付けた書類は赤札だらけ。
こんな現実が待っています。
さらに外為センターにいくと、繁忙日などは赤札だらけで、
札のないものは殆どなく、
赤札が本来の意味をなしてはいません。
そこで今からお話しする事を参考すれば、
銀行が普通に処理する限り、
今より速くなったり、安くなったりが期待できます。
さてここから本論です。まず、
(1)自前で外為をやっている
A.営業店で勘定処理している
多くの銀行は営業店で、顧客勘定を動かしています。
外為も例外ではありません。
この場合のポイントは、勘定処理が終わらないと
次の工程に進まないということです。
早く次の工程に進んでもらうには、
輸出、輸入を問わず勘定処理に必要な情報を、
キチンと銀行に提供する必要があります。
何が必要かは銀行によって、
あるいは依頼内容によって異なりますので、
予め取引銀行の担当者に聞くとよいでしょう。
励行してみて下さい。
B.センターで処理している
この場合、営業店は単なる取次です。
受付も形式点検だけです。
(形式点検とは内容は吟味せず、枚数確認やサイン・印鑑もれ
のチェックするだけのことです。)
つまり営業店では、特段の処理はしません。
この場合は「Urgent」と依頼すれば良いと思います。
銀行によってはバックオフィスである、
外為センターと直接コンタクト出来る場合があります。
直接出来れば、営業店での手続きをカットできます。
これは大きな効果が得られますので、
ダメもとで外為センターとの直接取引を、一度交渉してみて下さい。
(2)他行に任せている
A.営業店で処理している
営業店から見れば、後工程によその銀行が入っていても、
自分の役割に変わりはありませんので、
前にお話しした(1)・Aと同じ方針でよいと思います。
B.センターで処理している場合
こちらも上記の(1)・Bと同じですが、取引銀行の外為センター
とではなく、実際にやり取りをしている他行の外為センター
と直接やり取り出来れば、一番早く処理が期待できるようになります。
こちらはかなりハードルが高いのですが、
決して可能性が無いわけではないので、
トライしてみることをお勧めします。
以上があらましですが、これ以外に共通した対応方法として、
インターネットバンクサービスの利用があげられます。
これは次の安くするコツにも通じるのですが、
確実な手段と言えます。こちらも併せての検討をお勧めします。
4.安くしてもらうコツ
輸出、輸入を問わずドキュメンタリー取引よりクリーン取引の方が、
安く上げることが出来ます。まずは取引内容の変更が可能か。
銀行ではなく商売相手と交渉してみて下さい。
クリーン取引となれば、コスト削減と共にスピードアップも図れます。
ここから着手するのが良い方法です。
(1)自前で外為をやっている
商売の相手方が指定する銀行が、自分の取引銀行と、
コルレス契約を結んでいるか確認してみて下さい。
コルレスが無いと、直接取引が出来ないので、
銀行は通常、コルレス契約のある銀行を経由します。
そうするとそこの銀行はただでは動いてくれませんので、
当然取引銀行経由で、依頼者である皆さんに、
手数料を請求してきます。
調べてみて下さい。
案外余計な手数料を払っているかもしれません。
ここを変更してコルレス契約のある銀行=商売相手の指定銀行。
となれば、コスト削減だけでなくスピードアップも期待できます。
また取引量にもよるのですが、
取引銀行に相手銀行とのコルレス契約締結を申し入れる。
というのも有効な手です。
事実、私も担当先からもそういった要望があり、
銀行本部に申請を出して、認可になった例も複数あります。
(2)他行に任せている
一つの方法ですが、取引通貨に着目します。
USD(米ドル)やEUR(ユーロ)ならそのままで構いませんが、
特殊とは言えないまでも、
余りお目にかからない通貨で取引していた場合は、
これをUSDやEURに変更するだけで、
支払や受取に要する日本円が変わってくることがあります。
(もちろん自分に有利に変わります)
これは自分の取引銀行が、直接その通貨を調達できないため、
外為を依頼している他行から、その銀行が提示するレートで
通貨を調達しているからです。
この時通貨の交換では、必ず手数料が発生しますので、
少なくとも一回は余計な手数料を払っているわけです。
これをUSDやEURに切り替えるということは、
通貨の交換回数が減るので、
手数料の減額を図ることが出来るというわけです。
また通貨をUSDやEURにすれば、
取引銀行が自分で調達出来ますので、
事務処理も自分のところで完結でき、スピードアップも期待できます。
如何でしょうか。ここでお話ししたことはほんの例示にすぎません。
多くの場合、一つクリアーすると「速くと安く」が同時に実現します。
是非、皆さんも試みて下さい。
2016/1/19 貿易実務の情報サイトらくらく貿易