前回は貿易と外為の違いについてお話をしました。
ここからはその違いを踏まえて、銀行との上手な付き合い方を、
二回に分けて考えてみたいと思います。
先ずは輸出企業の皆さん向けのお話です。
ただし「カミ」をからめる話なので、
前回で触れた、「クリーン取引」はここでは考えません。
銀行が輸出企業と接点を持つのは、
銀行に船積書類が持ち込まれた段階からです。
ここが輸出「ドキュメンタリー取引」のスタート地点となります。
一方、輸出担当の皆さんから見れば、
銀行に書類を持ち込むのは船積後です。
陸上競技で言えば第四コーナーを過ぎて、
ホームストレッチに差し掛かった段階でしょうか。
ようやくゴールが見えてきたというわけですね。
「スタートとゴール」この認識の差は大きく、
いろいろな場面で、
銀行と企業の見解の相違が出る事になります。
平たく言うと、何か不都合が発生した場合、
銀行も企業も早く解決したいのに、
「なんでこんな書類を作ったのか?」(銀行)
「貨物はもう出したのだから、細かいことは言わずに、
一刻も早く輸入者側へ書類を発送してほしい。」(企業)
といった認識が衝突して、話がうまく進まないという、
不幸な状況に陥りがちです。
こんな状態では銀行と話をしても、
なかなかスムーズにはいかないと想像できませんか。
ちなみにこの衝突の傾向は、単純な取立依頼より買取の依頼、
中でもL/C付買取依頼の時に強く表れることになります。
(L/Cとは信用状のことです)
これはそれぞれの取引における、銀行の立場の違いによります。
取立であれば単なる委任契約の受任者の立場なので、
万一決済がされなくて代金回収が不能となっても、
銀行は直接損害を被るわけではありません。
しかし買取となると銀行は債権者の立場です。
代金回収が出来なければ、
輸出者から資金を返却してもらわねば、実損が出てしまいます。
銀行というところは、実損事故を極端に嫌がりますので、
その危険性のある取引には、事細かく関与してくるというわけです。
L/C付買取が最も細かく銀行と折衝が必要となる理由は、
銀行が今お話しした債権者の立場になるという点に加えて、
L/C取引では輸入者側から資金を回収するためには、
そのL/Cと輸出者提出の船積書類とが一致している事が、
大前提となるためです。
銀行から過剰(?)なまでの、問い合わせがくるのはこのせいです。
こういった銀行と上手に付き合うコツは以下の通りです。
先ずは一にも二にも「正確な書類」です。
特にL/C付の場合は、
もともとの契約やそれまでの商売の経緯がどうであれ、
L/Cで決められた通りの書類を作って、
銀行に提出することを強くお勧めします。
これはL/C取引の基本ルールである「信用状統一規則」という、
世界的な決め事の中に、L/Cで定めた条件通りの書類を、
L/C発行銀行に送れば、
必ず決済してもらえる、という約束が決められており、
銀行は、それを拠り所にする場合が大変に多いからです。
次に、銀行提出書類の作成にあたり、
L/C内容に疑問点があり、
不安を感じるようであれば、
持込予定の銀行に問い合わせれば、
実務上の対応について回答があると思います。
このように事前に銀行に照会しておけば、
その後何かあっても「事前に相談した」と強く反論できます。
(銀行はこの手のフレーズには弱いのです)
さらに言えば、普段から銀行担当者と連絡を密にしておき、
代金回収実績を積み上げておけば、銀行からたとえ照会があっても、
「指摘の点は、すでにシッパーバイヤー間で了解済みである。」
と回答することにより、迅速な書類発送が期待できます。
以上簡単ですが、輸出をする立場での、
銀行との付き合い方をお話ししました。
次回は輸入と銀行についてお話ししたいと思います。
2015/10/29 貿易実務の情報サイトらくらく貿易