輸出入、貿易が行われている場所というと、真っ先に海、港を思い浮かべないですか?
ところが、内陸でも貿易は行われています。内陸にある、例えば成田のような空港、いやいや、そこで確かに貿易は行われていますが、空港だけではありません。それ以外にも、内陸で輸出や輸入が行われている場所があるんです。それが内陸の港「インランド・デポ」です。
インランド・デポ:Inland Depotは直訳すると「内陸の倉庫」、荷積み荷下ろしのできる土地や輸出入貨物を入れる保税地域の倉庫(保税蔵置場)を有し、官民の第三セクター経営、あるいは倉庫、運送業等と通関業を兼業する民間企業経営による内陸地での輸出入通関機能をもつ物流拠点のことです。そして、その中に税関を誘致、あるいは近くに税関があることが多いです。
インランド・デポでは、貨物の積み下ろし、梱包、保管、通関、貨物の集荷、配送などが行なわれ、保税地域のため通関料や輸出通関後の貨物と輸入通関前の貨物に行った作業費等には消費税の税金がかかりません。保税地域の「保税」とは、「税の留保」、「税を徴収しない状態を保つ」という意味です。
インランド・デポを利用する場合、その内陸の保税地域という特徴から、輸入よりも輸出の方がメリットが多く生まれます。
輸出しようとする貨物をインランド・デポへ集約し、必要があれば、例えば段ボール詰めしたものをいくつかまとめてパレット梱包にするなど梱包作業をしてもらうこともでき、通関については税関検査になっても、税関指定の検査場へ貨物移動することなく、ほぼインランド・デポ内で対応でき、移動するための運送費や積み下ろし作業費などがカットでき、時間的にもコスト的にも速く安く済みます。通関後は、トラックあるいはコンテナに貨物を積み、貿易ができる空港や港(開港)へ運び、外国へ向けて航空機や船舶へ積み込むわけですが、その運送費に関しても保税運送になるため、運送費にかかる消費税がかかりません。
仮に1回の運送費が5万円だとします。普通であれば、その運送費にかかる消費税は2022年現在、10%ですから5千円ということになります。月に10回あれば月5万円、それが年間になれば60万円、節税になり消費税を負担しなくていいわけです。それを大きな効果、メリットと感じる、感じないかは、輸出を行っている企業次第かもしれませんが、どうでしょうか?
ところで、通関士試験の受験生をはじめ、通関業者に就転職を考えている皆さんも、就転職先となる通関業者は、空港や港の近くにしかないと考えている人もいると思います。確かに空港や港の近くには、いくつもの通関業者があります。しかし、比べればそれほど多くないにしても内陸にも通関業者があることを知っておくと就転職先の選択範囲が広がります。意外にも、今住んでいる市町村、あるいは近くにインランド・デポがあるかもしれません。
今、インランド・デポへの貨物の集荷、インランド・デポから空港、港への運送は、陸路中心でトラックやトレーラーヘッドによるコンテナけん引が主ですが、混雑、待機時間等が問題になっています。さほど多くない量の貨物であれば、大型ドローンで運ぶ時代は、そう遠くない未来かもしれません。
2022/05/30
くらしと貿易と通関と
Kyō