住宅ローン固定型は、その固定期間中は市中金利に左右されることなく返済額が同額ですが、変動型は、市中金利の影響を受けるため、場合によっては返済額が増えるリスクがあります。固定型と変動型の金利差が拡大しています。なぜなのでしょうか?|なぜ住宅ローン固定型と変動型に金利差が?

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公開日:2022.05.11  / 最終更新日:2022.05.18

なぜ住宅ローン固定型と変動型に金利差が?

住宅ローン固定多型と変更型
今年に入り、住宅ローンの固定型の金利は上昇傾向が続いています。その一方で、変動型金利は低水準の状態が続いているため、固定型と変動型の金利差が拡大しています。

ご存じの通り、固定型は、その固定期間中は市中金利に左右されることなく返済額が同額ですが、変動型は、市中金利の影響を受けるため、場合によっては返済額が増えるリスクがあります。

今、固定型と変動型の金利差が拡大していることから、新規で契約する方はどちらを選ぶべきか悩ましいところでしょうし、既に住宅ローンを返済中の方も、固定型から変動型へ、逆に変動型から固定型へ借り換えを検討している方が増えているそうです。

固定型から変動型へ借り換えを検討している方は、この先も変動型は低金利が続くと予測してのことだと思いますし、逆に変動型から上昇傾向にある固定型にあえて変更を検討するのは、この先変動型金利が上昇する前に金利をFixしておきたいという意識からでしょう。変動型金利は、固定型金利の後追いで上がるというのが一般的です。

住宅ローン金利を、固定型とするのか、または変動型を選ぶのかは、いつの時代も永遠のテーマであり、正解は誰にもわかりませんし、またご家庭によって正解は異なると思います。

しかし、住宅ローンの金利が何から決められているのかを知っておくと、借り換えや新規で住宅ローンを契約する際の判断のヒントとなるかもしれません。固定型と変動型の金利を決める際には指標となる数値がありますが、両者はその元ネタとしているものが異なります。

固定型は、日本の新発10年物国債の流通利回りを指標としていて、それはアメリカの長期金利に連動しています。アメリカが利上げに動いていることが、昨今の固定型住宅ローン金利の上昇につながっています。

一方、変動型は、日本の景気の指標である短期金利に連動しているため、日本の金融緩和による低金利政策が変動型住宅ローンの低金利を招いています。

つまり、利上げに動いているアメリカ、金融緩和を続ける日本という昨今の日米の金融政策の違いが、固定型、変動型の住宅ローンの金利差となって表れているのです。

5月4日、アメリカのFRB(米連邦準備制度理事会)は、これまで0.25%幅であった政策金利を6月から0.5%幅引き上げると発表しました。そうなると、住宅ローンの固定型金利が更に上昇するのかと心配になるところですが、そう直結した状況にはならないと思われます。

なぜなら、日本では現在、長期金利の上昇を抑制するために、0.25%という利回りを指定して日銀が国債を無制限に買い入れる「指値オペ」を行っているからです。これにより無制限にアメリカの利上げに引っ張られることはないため、住宅ローンの固定型金利が上がり続けるとは考えにくいでしょう。

それでは変動型の金利の今後はどう考えるべきでしょうか。

指標となる日本の短期金利が上昇するきっかけは、金融緩和政策を解除したとき、つまり、日本の景気が良くなったときと考えられます。金融緩和政策解除の目安は、消費者物価指数が安定的に2%を超えたときとされています。

実は、この3月まで7カ月連続で消費者物価指数は前年同月比を上回っています。一見、景気が上向きのようにも見えますが、その主な要因は円安とロシアのウクライナ侵攻による物価高とされていて、純粋な景気回復とはみなされていません。このことは、4月末に開催された金融政策決定会合で、この先も当面、現行の金融緩和政策を継続する意向を示したことからもわかります。

これらを勘案すると、変動型の金利がこの先すぐに上昇する要因は多くはないでしょう。

とはいえ、先のことは誰にもわかりませんし、予想を超えた何かが起こるかもしれません。最終的には自分自身で判断するしかありませんが、金利の変動要因の知識があることは、判断の一助になるのではないでしょうか。

今回は、昨今の日米の金利差が日本の住宅ローンの金利へも影響していることをお伝えしました。金利の話をしていると、どちらを選ぶのが得か損かという思考になりがちですが、実際には金利や返済額だけで選ぶのではなく、住宅ローンの返済額が家計に占める割合や、返済額が増えるリスクをどこまで許容できるかなど、ライフプランを立てて総合的に判断することをお勧めします。

なお、本コラムでお話した固定型、変動型の金利がどのような動きとなるかは、あくまで個人的見解です。考え方のひとつとしてお読みいただけると嬉しいです。

2022/05/11
元通関士・現FPのあれこれ話
山﨑裕佳子

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