貿易担当者にとってL/C(信用状)は頼もしい存在です。L/C条件通りの書類を作成し銀行に持ち込めば、銀行が買い取ってくれほぼ確実に決済資金が手に入ります。この仕組みは早期の資金回収には大変に有難い方法なのです。
しかしこの話が上手くいくためには前提があります。すなわちL/C条件通りの書類を作らなければならないのです。そんなの簡単じゃないか。そう思う人は多いと思います。たしかに多くの場合それで上手くいきます。しかし今回はそうはならない場合を一つご紹介します。更に併せてその解決策もお示ししたいと思います。
今回話題になったのは原産地証明書(Certificate of Origin)です。(以下C/Oと略します)C/Oとは簡単に言えば商品原産地を証明する書類です。余りに当たり前すぎて申し訳ありません。少し反省です。さて気を取り直して本題に入ります。
このC/OですがL/Cによっては、C/OにL/C番号の記載を要求するときがあります。誰が作っても良いC/Oであれば自分以外のであっても、作成者の了解を得てL/C番号を追記すればそれでお終いです。ところが商工会議所作成の場合は厄介です。通常は載せてくれません。そうなるとディスクレ状態の書類を銀行に持ち込むことになります。(ディスクレ状態とはL/C条件に不一致の状態を指します。このままでは最悪輸入側からの資金回収が不能になってしまいます。)
これでは困りますので何とか対策を講じる必要があります。では取引銀行にも輸入者側にも了解して貰える方法はあるのでしょうか。100%これだという解決方法はないのですが、結果これなら大丈夫ではと言う物は幾つかあります。これらを順にご紹介していきます。
その一 L/Cの必要書類から外して貰う。
そもそもL/C必要書類にリストアップされているから問題になるのです。ならばL/Cから外して貰えば問題自身が無くなる事になります。但し輸入者にしてみればC/Oが手に入らない可能性が出てきます。この作戦は輸入者との事前ネゴが欠かせないようです。
その二 L/C番号記載条件からC/Oを外してもらう。
これは「その一」ほど輸入者の抵抗は受けない気がします。実際のL/Cではこの条件となっているL/Cも見かけます。
その三 ケーブル・ネゴで了解を取り付ける。
今までの二策は何れも輸出書類を銀行に持込む前の対策です。しかし多くの場合銀行はこの状態(C/OにL/C番号無し)を、買取書類をチェックしていて気づきます。つまり遅すぎるのです。こうなったらL/C発行銀行にSWIFTを打って事前了解を取り付けます。これをケーブル・ネゴと呼んでいます。正式な手続きではないのですが、当事者間ではこれ一回限りのルール変更として認められています。(正直このパターンが一番多かったです。)
以上三つの対策をお話ししました。実はこれ以外にも、鉛筆で補記すれば良いのでは。こんな話もありました。しかしこれはいかにもいかにもの不味い話であり、検討の俎上には載せなかった事を最後に付記したいと思います。
2022/05/06