前回のコラムから1ヶ月以上が経ちますが、ロシアによるウクライナ侵攻は過度な緊張を増しており、ウクライナ人が続々と隣国へ避難しています。フィンランドもその隣国のひとつとして、ウクライナ人の受け入れを積極的に進めています。移民局によると、今年中には最大8万人の避難民者がフィンランドに入国すると推計しています。
しかし、国が異なれば言語・文化すべてが異なります。そうした背景を基に、この混沌とした情勢の中、フィンランドはどのようにウクライナ人を受けて入れていくのでしょうか。今回は、現在進行中のその様子を簡単に見ていきたいと思います。
2月24日にウクライナ侵攻が始まって以来、4月4日の時点ですでに1万5千人のウクライナ人がフィンランドでの一時的な保護を申請しています。この一時的な保護はEUの一時的な保護指令に基づいており、居住申請が登録され、その後労働許可証を取得することになります。
フィンランドには、このウクライナ侵攻が始まる以前から一定数のウクライナ人が移住しており、その家族や親戚宛に入国してくる人たちが多いです。
今まで移民・難民を受け入れてきたフィンランドですが、過去と大きく異なるのは、彼らの属性です。ウクライナからくる避難民者は、約85%が女性、40%が18才未満の子どもです。この中には高等教育(学士以上)を受けた女性たちが一定数いると推定されています。過去の受け入れですと、例えばシリア難民などは家族一家で難民してくるケースが主に多く、また基礎教育を受けていない人たちもかなりの数がいました。
それと比較すると、入国後の対応は今までのような対応とは別の形で行わなければなりません。
フィンランド移民局は早速、雇用手続きの迅速化、例えば滞在許可証の取得を1週間から10日早めるなどの対応をはじめました。滞在許可が降りた後の社会・福祉サービスをはじめ、子どもの教育支援、そして就労支援へとトータルなサポートが必要となっています。
社会福祉サービスは、緊急のヘルスケアや基本的な公共サービスは迅速に対応できますが、戦争関連のトラウマに苦しむ人々に対応できるようなサービスや専門家の不足を指摘しています。
子どもの教育支援は、18歳までの義務教育は受けられますがウクライナ人にとって「義務」とはしないことを前提としています。各地の大学などでは、本来であれば非EU加盟国であるウクライナは授業料を支払う必要がありますが、これを免除する制度に変更しています。また編入やオープン講座などにも積極的に参加できるような仕組みを整備しています。
そして一番難しいのが、就労支援です。ただでさえフィンランドの外国人労働市場があまり良くない状況のところ、早急に就労が必要なウクライナ人が入国してきたということで、雇用局をはじめとする担当機関やボランティアグループは、今までの壁を打ち破る良い機会と捉えるようにしているようです。
「Terve! フィンランドにおける外国人の労働市場は今」
https://www.rakuraku-boeki.jp/kaigai-dayori/finland-dayori/2021-10-26
雇用局は「過去の難民者とは違い、入国してくるウクライナ人は大卒の女性で幼い子どもを抱えている。この状況は育児支援の必要性や就労の観点から人身売買のリスクの高さを表している。これをフィンランドの労働市場にうまく組み込ませることを、フィンランドの全政党にコンセンサス取らせるようにしなければならない」と指摘しています。
フィンランドとウクライナは、大国ロシアを隣国に持つ者同志という根本的な部分があるからか、この侵攻が始まった時には直ちに、支援団体の結成や募金支援、緊急医療や食糧支援などさまざまな形の支援が出来上がっていたのが印象的でした。
まったく先の見通しがつかないこの情勢の中、一旦は母国を去ったウクライナ人たちが一刻も早くフィンランドでの生活に慣れてくれるよう、同じ移民として関心を持ち続け、微力ながらの支援を行っていきたいと思います。
参照記事:
https://yle.fi/news/3-12406093
写真出典元:
https://www.ts.fi/uutiset/5619803
2022/4/22