「世界最大のコンテナ取扱量がある上海港の機能低下は深刻(中略)上海港の取扱量は通常より40%減少しているとの試算」と2022年4月9日読売新聞朝刊は報じました。筆者が勤める輸入の通関現場では、取扱件数も40%どころかそれ以上減少しています。|輸出入通関現場からみた上海ロックダウン

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公開日:2022.04.13

輸出入通関現場からみた上海ロックダウン

ロックダウン中の上海

「世界最大のコンテナ取扱量がある上海港の機能低下は深刻(中略)上海港の取扱量は通常より40%減少しているとの試算」と2022年4月9日、読売新聞朝刊は報じました。

筆者が通関士として勤める輸入の通関現場では、これまで上海港からの輸入貨物は、貨物を積んだ船が予定より2~3日程度遅れ日本の港へ到着するというような傾向であったのが、4月2週目後半以降に中国から日本へ到着する貨物あたりから、いつもの輸入者のいつもの輸入貨物が上海港ではなく寧波(Ningbo)港から積まれてくるようになり、取扱件数も40%どころか、それ以上減少しています。

中国から原材料、自動車などの部品、その他いろいろな製品におよび輸入し難くなっており、日本から中国への輸出においても、日本で通関、輸出し、上海港まで着いたものの、そこから先どうなるか分からない状況です。

更には2022年1月1日より発効したRCEP(中国はじめ東南アジア諸国等14ヵ国との自由貿易協定)の「原産地証明書」発給も受けられず、原産地証明書なしの輸入申告という現象も生じています。特にRCEPにおいては、中国からの輸入品に関し4月1日より僅かながらも2段階目の関税引下げが行なわれたばかりで、早速その恩恵が受けられなくなってしまっています。

更に円安傾向も手伝い、日本にとって一番の貿易相手国である中国からの輸入品を安く仕入れることができなくなっています。そのことは一部のものにおいて値上がりが続出している昨今、更なる値上がりを引き起こす要因にもなり、まだ値上げをしていない物にまで値上がりを広げることにもなりかねません。

このままでは、一部のもので値上がり続出の日本では、物価を下げる要素が見つかりません。そしてこれらの動向は、日本のくらし、経済に大きなダメージを与えることは間違いありません。中国と貿易している他の国でも同様のことが言えます。ロックダウンしている上海港の機能低下を補うため、上海港に代わって、寧波等他の港や空港から輸出するような傾向がみられますが、その寧波等他の(空)港でも、コロナ感染者が出て増加すれば、いつどうなるか分からない状況です。

国際物流は、工場等から(空)港への、あるいは(空)港から目的地までの運搬、(空)港での荷役(船・航空機、コンテナ、トラックから、あるいは船・航空機、コンテナ、トラックへの貨物の積み下ろし)、(空)港施設での貨物の出し入れ、保管、梱包、通関、そして搬出入や在庫管理、伝票発行の事務処理など、どこが欠けても成り立ちません。

例えば通関業者や港の施設等が機能していて通関、荷役や保管などができても、コンテナを運ぶ運送会社が全て閉鎖されていたら物流はストップします。中国でのコロナ感染が収束するか、あるいは中国の「ゼロコロナ」政策が大きく方向転換されない限り、国際物流の不安定は続くことになります。しかし現状では、どちらも期待できません。そうであれば、すでに早い段階で対策している企業もありますが、中国と貿易を行なっている日本の企業が、輸入しようとするときに中国ではない他の国で調達先を探し、前述の原材料、自動車などの部品、その他いろいろな製品について1日でも早く物流の大幅な見直しをしなければなりません。

その見直しができるかできないかで、日本での生産・製造停止、更には業績悪化、ひどい場合は倒産、そしてますますの物価上昇、私たちのくらしにも大きな影響を与えるか否か決まってきます。

それほど、中国という国が、日本にとって、世界にとって、いまや強大な力を持つ、そして大きな影響を与える大国のひとつとなったということに改めて気付かされずにはいられません。

2022/04/13
くらしと貿易と通関と
Kyō

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