日本でお馴染みのケンタッキーフライドチキン(KFC)が、首都ヘルシンキにオープンしました。開店当日、1番最初のお客さまに1年間分のチキンを無料提供するという情報を駆けつけて、3日前からテントを張って待っていたその人とは。
今回はフィンランドならではの光景を紹介します。
開店3日前からテントを張って待っていた人は「チキン・ラバー(鶏肉愛好者)」と名乗る男性でした。開店時間になると、この男性が「歴史的瞬間」とスピーチを始めましたが、その内容が動物の権利に焦点を当てたもので、つまりこの男性は動物愛護の抗議グループの一人であることがわかりました。
「私は自分の嗜好ではなく、何十億もの鶏やその他の抑圧された動物のために、ここでスピーチするために3日前から待っていました」と述べました。
その後、抗議グループの他のメンバー2人が「Love wins. Not wings(勝利を愛するが、鳥の羽は要らない)」などと書かれたTシャツを着て登場しスピーチを続けようとしたところに、警備員に退場させられてしまいました。
このKFC以外にも、ここ数年でファーストチェーン店が続々と上陸をしているフィンランドですが、食料のサプライチェーン上で発生する人権問題や店舗における労働環境問題に対して指摘する声が多くあります。今回もここフィンランドで提供する鶏肉は国産か輸入産か、また、グローバルなファーストチェーンよりは地元のレストランやカフェを支援すべきだ、などとオープン前から活発な議論が行われていました。
ちなみにKFCでは、動物愛護に関する5つのガイドラインを策定し、他のファストフードチェーンよりも透明性が高いと言われています。ただイギリスとアイルランドの自社製品に使われている鶏の3分の1以上が足皮膚炎(動物が正常に歩けなくなる痛みを伴う足の病気)を患っていることを認めています。
このような情報開示や昨今の気候変動問題を通じて、若い世代を中心にヴィーガン(菜食主義者)も浸透しはじめており、こうした店舗オープンに対する抗議も高まっていました。
ただ抗議の方法が、米国の抗議グループやスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんのように組織やメディアに真っ向から対立するのではなく、鶏肉愛好者と見せかけておいて群衆が注目するオープン当日にスピーチを企む方法は、したたかさが垣間見られるフィンランド人の国民性だと、著者の目には写りました。
日本と比較すると、日本ではKFCは「クリスマスメニュー」の一つと捉えられている部分もあるかと思いますが、もちろんフィンランドではKFCとクリスマスは無関係です。また日本ではこのような抗議活動が展開されることは、まずほぼ皆無かと思われます。
グローバルなファーストチェーン店をひとつオープンするにあたり、フィンランドの反響は思いのほか大きく、そして著者にとっては改めて国民性を知る機会になりました。
参照記事及び写真出典元:
https://yle.fi/news/3-12184346
KFC, Citizenship Report 2020
https://www.yum.com/wps/portal/yumbrands/Yumbrands/citizenship-and-sustainability/reporting-and-disclosures
2021/12/02