お馴染みのAIBA論壇ですが、今回も興味深い議論がされてました。「シーウェイビル」と「サレンダードB/L」が俎上に上がっていたのです。
この「シーウェイビル」と「サレンダードB/L」はいずれも、海上貨物運送に用いられる輸送状とも言うべきものですが、両者の性質の違いから、銀行はその扱いに悩まされる部分があります。今回はその辺の機微についてお話ししたいと思います。
まず「シーウェイビル」ですが勿論日本語由来では無く、「Sea Waybill」と綴り「海上運送状」と訳される英語由来のものです。意味するところは「流通性の無い海上運送書類」という具合になります。銀行が取扱根拠としてるのは信用状統一規則(UCP600)の第21条以下の条項となります。銀行としては保全確保の見地からB/L(船荷証券)が望ましいのですが、航空貨物では「Air Waybill」が圧倒的な地位を占めており、その影響も有り「Sea Waybill」は、 採りあげ容易となっています。
またいわゆる船荷証券の危機を考えた場合、銀行としては明確な根拠が無い「サレンダードB/L」を常用して欲しくない。このような思いもあり買取依頼者の信用性に重きを置く、信用状無し取引ではその姿を見る事が多いといえます。但し銀行としては「Sea Waybill」は発行後であっても、「コンサイニー」(受取人名)を含めて変更が可能な点が悩ましく、B/Lの全面的肩代わりを推進するまでの意思がないのが実情です。
一方「サレンダードB/L」は Surrendered B/Lと綴ります。日本語では元地回収B/Lと呼んでます。意味するところは、本来輸入者に送るべきB/Lを、元地(すなわち輸出地)で船会社が回収してしまった。そしてそのことをB/Lに「Surrendered(回収済)」と表示した。更にコピーとして当該サレンダードB/L を輸出者に手交した。これが一連の流れとなります。
この「サレンダードB/L」は実務上の要請から生み出されたものであり、実際に目にするようになったのは、ここ20~30年位です。出始めた頃はその根拠が分らず、本部に問い合わせても判然としない、よって手探り状態で書類を受付して海外へ発送していました。しかし作成根拠こそ不明でしたが、外見も記載内容もB/Lそのものです。(当たり前ですが)よって買取依頼人に問題がなければ、そのまま買取に応じていました。
また信用状付き買取であれば、L/C本文の中にSurrendered B/L acceptableとあれば、無条件でスルーさせていました。これはサレンダードB/Lでも、L/C条件でそれを認めるのであれば、発行銀行の支払の確約は存在し、輸出債権は確保されている。こう言った判断を優先させたからです。
結局の所、銀行での両者の取扱はどちらかに収斂するのではなく、限りなく今の状態が継続すると思います。もし決着が付くとしたら、それは劇的な変化の結果でしょう。それが船積書類の完全電子化なのか、貿易決済における銀行の役割終了かは分りませんが、
そんなときが来るまでは、銀行は今のような対応を続けるのだと思います。
参考記事:JETRO サレンダードB/Lと海上運送状(Sea Waybill)の違い
https://www.jetro.go.jp/world/qa/04C-070301.html
2021/06/13