コロナ禍で世界中のオンラインショッピングの注文が急増している中、欧州議会(EU)は今年7月1日よりEU圏外から圏内へと輸入されるオンライン商品に通関手続きを実施する新しい規制を施行する予定です。今回はその規制や現状の郵便事情について紹介します。
現在、EU圏外のオンラインショッピングで買い物をして、その合計が22ユーロ以下の場合は付加価値税(VAT)が免除され、通関や関税の対象外となっています。しかし7月1日から施行される新しい規制ではこの免除措置が廃止され、価格の大小に関わらずすべてのオンラン商品に通関が必要となります。
現在アジアや米国のオンラインショップの大半では、すでにVATを直接支払えるシステムが構築されているところもあります。しかし、最終的なチェックアウト価格にVATが含まれていないオンラインショップで注文した場合、消費者は90セントのサービス料をフィンランドの郵便局(Posti)に支払う必要があります。
一方EUでは、この新しい規制に合わせて、消費者がオンラインショップで直接VATを支払えるように「Import One-Stop Shop(IOSS)」を構築しています。
この新しい規制は、150ユーロ以下の商品にしか適用されません。この価格の壁を超えると、消費者はVATだけでなく関税も支払うことになります。このような事態を避けるためには、消費者が購入時にVATを支払うことができるサイトで買い物をすることが最善の方法だと、フィンランド郵便局の国際eコマース担当者は述べています。
実際に著者は、EU圏外のオンラインショップで22ユーロ以下に抑えられる買い物の場合は、そのサービスを利用していました。今後はこうした事態からなるべくEU圏内で利用するようにと考えています。
今回の新しい規制により、また著者のような行動変容によって、EUに拠点を置く企業の競争力は、EU圏外に拠点を置く企業に比べて向上することが、フィンランド財務省によって予測されています。
またこの規制によって約70%の注文でVATがオンラインショップに直接支払われるようになると予測されていますが、ショップ内のシステム移行期間にどれぐらいかかるか、さらには到着後の税関等のシステム移行や手続き進行にもどれぐらいかかるか、この点がフィンランド国内では焦点となっています。
というのも、今年の3月中旬からフィンランドの税関では各国からの通関電子データの送信義務化によって、現場のシステムがこの義務化に対応できておらず、EU圏外からのすべての荷物に遅れが出ています。実際に著者も日本の実家からEMS便が到着したにも関わらず、日本発送から半月以上経過しても税関検査に入ったまま未だに受け取りができていない状況です(通常ですと日本ーフィンランド間のEMS便は、ほぼ1週間ぐらいで受け取れます)。
こうした現状から、7月以降の新しい規制が導入されても現場は再び大混乱に陥る可能性が高いですし、それまでに現在の税関混雑が解消されればですが、その可能性も今は未知であります。
今回のコロナウィルスが弱毒化するまでにはあと1-2年かかるとも言われており、するとわたしたち人間の生活もこうした規制やシステムの変更を余儀なくされることが続くと予想されます。人だけではなく、モノの移動についても改めて考えさせられる状況であります。
参考記事
フィンランド郵便局(7月1日からの新規制について):
https://www.posti.fi/fi/henkiloille/paketit-ja-seuranta/lahetyksen-seuranta-ja-hakeminen/paketin-tullaus-ja-kasittelymaksu/tullaus-1-7-2021-alkaen
フィンランド税関(現在の税関混雑について):
https://tulli.fi/en/-/delay-in-customs-clearances-of-postal-packages-arriving-from-outside-the-eu
欧州議会(「IOSS」について):
https://ec.europa.eu/taxation_customs/business/vat/ioss_en
日本郵便(通関電子データ義務化について):
https://www.post.japanpost.jp/int/ead/index.html
2021/05/27