「輸入許可前引取り」という単語を聞いたことがある方も多いかと思います。私は初めてその言葉を聞いたときには何だか違和感を抱いてしまいました。
貨物は輸入許可を受けなければ引き取ることができないはずなのにどういうこと?と、とても不思議な言葉のように感じたのです。しかしながら制度をしっかり理解すれば何ら不思議ではありませんでした。今回はそんな、輸入許可前引取についてお話したいと思います。
「輸入許可前引取り承認制度」は通称「BP申告」と呼ばれています。「Before Permit」の頭文字を取ってBPです。ある条件下にある貨物について、輸入の許可前に貨物を直ちに引き取ることができる制度のことです。
先ほども申し上げましたように、原則、輸入貨物は輸入の許可を受けなければ国内に引き取ることはできません。しかし、貨物を保税地域に長期留置させることにより、輸入者の商取引上の商機を逃すことにつながってしまい、適当でない場合などが世の中には存在します。このため、こういった制度が導入されているのです。
この輸入許可前引取制度を利用できる例として次のようなものがあります。
1. 引き取りを急ぐもの(貴重品や危険物、変質・損傷の恐れがある場合など)
2. 時間的制約がある場合(展示会等へ出品するものなど)
3. 特恵税率又は経済連携協定に基づく税率の適用のため必要とされる原産地証明書の提出が遅れる場合
4. 税関側の事情により輸入許可が遅延する場合
5. 申告者側の事情により、課税標準の決定に時間を要するため輸入許可が遅延する場合
といった例が挙げられますが、文字で読んでもなかなかわかりづらいものなので、5番目の例を元に身近なもので具体的にお話したいと思います。
5番目の例に該当する、皆さんにもお馴染みのものとして、海外から輸入する「マグロ」があります。
とある水産会社が、定期的にオーストラリアからマグロを輸入していました。もちろん切り身などではなく、丸々一匹です。そのマグロの価格は、日本国内において市場で競りにかけられることによって確定します。
インボイスはあくまで仮の金額であり、日本に到着したばかりの段階ではまだこのマグロが一体いくらになるのか全く未知数なのです。これでは、正しい輸入申告及び納税をすることができません。
そこで用いられるのがこの輸入許可前引取制度です。
輸入者は一旦、仮の金額で輸入許可前引取承認申請をします。あらかじめ担保を設定して仮の納税を行い、マグロを引き取ります。そして市場での競りが終わりマグロの値段が確定しましたら、改めて正しい金額にて輸入申告を行い、正しい金額の納税を行うという流れで輸入をされていました。
もちろん、この制度の適用を受けられるのは、特定の条件に合ったものに限られますので何でもかんでも輸入許可前に引き取ることができるというわけではありません。
でも私たちが普段何気なく食べているマグロにもこういった制度が活用されていることを知ると、私のように今まで何となくしっくりこなかった方でも、意外と身近な制度であることがお分かりいただけたかと思います。
2021/04/20
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