スエズ運河で大型コンテナ船「エバーギブン」が座礁し、スエズ運河が航行不能となってしまっていた事故は連日ニュースでも報道されていましたね。世界最大級とも言われる超大型船が運河を遮るようにして座礁している映像はあまりにも衝撃的でした。
この座礁事故により起こり得る損失や賠償といった話題は新聞やネットで盛んに取り上げられているようです。では、このような事故が起きたときにフォワーダーでは何が起こっているのでしょうか? 一般的な流れとしてお話したいと思います。
まずは事故の一報が入ると、社内全体に通知が入ります。メールなどで全社員に周知させ、事故の詳細が判明する度に情報が更新されていきます。それと並行して、事故の起きた船舶に自社の手配したコンテナが積載されていないかを確認します。マニフェストや自社のブッキングシステムなどを調べて、早急に対応します。ここで運悪く自社手配のコンテナが積載されていたとなると、一刻も早く顧客へ連絡をするとともにさらに詳細な事故の状況の入手をすることになります。
幸運にも該当の船には自社手配のコンテナが積載されていないと判明すれば、次は、同じスエズ運河を今後通行する船舶には積載されていないかを調べます。事故の影響で運航スケジュールに大幅な変更が発生する事が必至だからです。
欧州方面で現在動いている船を調べ、自社手配コンテナの有無を確認し、該当があれば関係部署に連絡を入れ顧客に情報を提供します。この辺りの作業はスケジュールを確認する側も顧客に連絡を入れる側も非常に骨の折れるものとなり、「何でこんな事故が起こったんだ。。。」と恨み節を唱えることになります。スエズ運河で事故が起きたからといってアジアや北米方面の物流が止まるわけではないので、通常業務と並行しながら対処しなければなりません。
そういった情報収集と伝達をしている間にも、顧客からの問い合わせが入ります。事故の起きた欧州方面での輸出入がある顧客からは、自分たちの貨物にどれくらいの影響があるのかという相談への対応に追われます。また、あまり直接的な関係がなさそうな他方面への輸出入をされている顧客からも、影響がないか確認してほしいという依頼が入ったりもします。
大手企業などですと、「影響の有無を上長に報告しなければいけないので書面でまとめて提出してほしい」などとお願いされることもあります。もちろんお断りをするわけにもいきませんので、緊急業務の合間を縫って必死に報告書を仕上げることになります。
ざっと書いただけでこれくらいの作業が発生しますので、コンテナ船の事故というのはフォワーダーにとっても本当に起こってほしくないものです。今回はさらに、日本において一年で最も業務が集中する年度末に起きてしまいましたので、輪をかけた忙しさであったことは想像に難くありません。
事故が起きて大変なのはもちろんフォワーダーと顧客だけではなく、船会社や運河の管理会社などたくさんの方に影響があります。今後はこのような事故が起きないよう、安全で安心な運航がされることを願うばかりです。
2021/04/04
輸出入よもやま話一覧