トルコに来て、「お茶飲みにいかない」とか、「今度ご飯食べにおいでよ」という誘いをよく受けるようになり、人好きのするトルコ人らしいとありがたく思っていました。ただ、「朝ごはん食べにおいで」という誘いは、最初のころは、かなり不思議でした。
集合時間は9時とか10時とかで週末に誘われることが多く、行ってみると朝ごはんというよりはブランチという感じで、2時間3時間とゆっくりおしゃべりをしながら、いろいろなものを食べつつ、仲良しと時間を過ごすイベントのような位置づけな感じです。家だけでなく、カフェなどでも朝ごはんの提供があり、「朝ごはん18種類で30リラ、お茶は無制限」といった看板が店先に出ているところもあります。
朝ごはんは、トルコ語ではkahvaltı と言いますが、これはコーヒーを意味する kahveと下や元を意味するaltıから成る複合語です。コーヒーを飲む前にお腹に入れておくものという意味があります。実際に、朝ごはんを食べた後にはトルココーヒーを飲む習慣もあります。ただし、朝ごはんを食べるときにはコーヒーではなく、お茶を飲むのが一般的です。
トルコの朝ごはんに欠かせないのは、まずはお茶とパンにオリーブ、そして白チーズです。これに、ゆで卵やメネメンというトマトとピーマンの卵とじやオムレツといった卵料理がつきます。トマトやキュウリ、パセリやミントといった野菜、ジャム、バターも朝ごはんの定番です。さらに、クロテッドクリームと蜂蜜、大きな餃子の皮のようなユフカという皮の中にひき肉やチーズ、ホウレン草や長ネギなどを入れて焼いたボレキやギョズレメといったものも並びます。食事の中で一番好きなのは朝ごはん!という人も結構いるほど、朝ごはんは特別な食事になっています。
トルコ人の家の冷蔵庫には、オリーブと何らかのチーズが入っています。パンも主食なのでほぼ必ず常備されています。食事を作る時間がない、簡単にすませたい時には、朝ごはんの定番である、お茶とパンとオリーブとチーズを夕食代わりに食べて、「今晩はもう面倒くさいから朝ごはんですませたわ」ということもあります。朝に食べる食事だけではなく、朝ごはんとして食べられる定番のものを朝ごはんとひとくくりにしている面もあるようです。
朝ごはんの定番のオリーブは、マルマラ海、エーゲ海、地中海の沿岸地域で栽培されています。この地域に行くと、葉の裏が白っぽいオリーブの木が植わったオリーブ山が延々と続いていて壮観です。トルコでは、オリーブグリーンの実よりも、熟して黒くなったオリーブを塩漬けにしたものや若い実に傷をつけてあく抜きしてから塩漬けにしたものがよく食べられています。
オリーブの2019年-2020年の生産量を見ると、トルコは33万トンでエジプト、スペインに次いで世界3位となっています。消費量でもトルコはエジプトに次ぐ世界2位で、国内消費が多いためか輸出量は、84,000トンに留まっています。
オリーブオイルの生産では17万トンの生産量で、スペイン、イタリア、ギリシャ、チュニジアに次ぐ世界5位となっています。オイルは輸出量でも世界6位。ちなみに輸入量で世界8位となっている日本にも輸出されています。
実家の近くのスーパーでオリーブオイルを手に取ったら、原産国がトルコになっていてなんだか嬉しくなりました。
参考資料:
オリーブ・オリーブオイル業界レポート(トルコ輸出業協会)2020年6月版
https://tim.org.tr/files/downloads/Strateji_Raporlari/Zeytin_Zeytinyagi_Sektor_Raporu.pdf
2021/03/31
海外だより:トルコより
土窓愉見
トルコ在住