新型コロナウィルスのワクチンが続々と海外から到着しましたね。厳重に梱包されたワクチンが飛行機から荷卸される映像は、何だか救世主がやってきたかのように見えて思わず見入ってしまいました。
今まで輸入されているワクチンは全てが航空輸送されていました。これは緊急性が高いことはもちろんですが、新型コロナウィルスワクチンが超低温を保たなければいけない構造である事も一つの理由と考えられます。航空輸送の際には大量の保冷剤とともに梱包されていたようですね。
それでは海上輸送では低温輸送はできないのかというとそんなことはありません。今回の新型コロナウィルスワクチンのような緊急性の高いものはそもそも輸送日数の面から考えて、低温輸送可否に関わらず海上輸送が選ばれることは当分ないでしょうが、そうではなく日数が多少かかってもよいものは海上でも低温で運ぶことができます。それが「リーファーコンテナ」と呼ばれるコンテナです。
リーファーコンテナは冷凍や冷蔵の貨物の輸送に使われる特殊コンテナです。それに対して温度管理のできない普通のコンテナは「ドライコンテナ」と呼ばれるのが一般的です。リーファーコンテナは冷却装置を内蔵し壁の内部に断熱材が入っており、温度を一定に保つことができるため冷凍や冷蔵の貨物を輸送することが可能になっています。
低温で輸送しなければならないものというとまず食品が思い浮かびますが、リーファーコンテナは食品以外にも様々な用途に使用されています。例えば生花なども温度管理が必要になりますのでリーファーコンテナが選ばれます。
また夏場はオンデッキのドライコンテナ内部はかなり高温になりますので、高温下での品質劣化が懸念される精密機器なども、季節限定でリーファーコンテナにより運ばれることもあります。医薬品ももちろん含まれていて、新型コロナウィルスのような緊急性が高いわけではないワクチンは途上国向けにリーファーコンテナで輸送されていたりもします。
リーファーコンテナ手配の際の注意点としてはまず料金面の問題があります。コンテナ自体が特殊に製造されたものですし、港に搬入された後も低温を保つために電源に繋がれる必要があり、電気代もかかります。そのためリーファーコンテナの料金はドライコンテナの倍以上、航路によっては数倍かかることもあります。
また、コンテナの運搬の際にも、電源付きのMGシャーシという特殊車両を手配しなければなりません。こちらももちろん料金が高くなりますがそれより問題となるのが予約の取りにくさです。どのドレー会社でもたくさん保有しているわけではなく台数に限りがありますので、夏場のMGシャーシは取り合いといった様相となることもあります。
そんな、通常より手間とお金のかかるリーファーコンテナではありますが、大量に輸送するときにはやはり航空輸送よりも料金面でのメリットは大きいでしょう。
いつの日か、新型コロナウィルスワクチンがリーファーコンテナで輸送されているのが見られれば、その時は本当にこのコロナ禍が落ち着いて世の中が元通りになったと言えるのかもしれませんね。急いで運ぶ必要がなくなったということですから。
2021/03/05
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