
コロナウイルスが流行するまでのトルコでは、マスクをしていたら重篤な病気にかかっていると思われてきました。
日本人の友達がマスクをして空港に行ったら、チェックインカウンターで病気だと疑われ、かかりつけの医師から飛行機に乗っても問題ないという診断書を持ってくるようにと言われたことがあるほど、マスクをするのは特別なコトでした。
そんなトルコですが、今回のパンデミックに対する対応は意外と早かったように感じます。一般の人がマスクをするようになったという意味ではなく、マスクの生産という点でですが。
トルコは繊維大国で、綿花や羊毛の生産から始まって製糸、織布、縫製とどの段階も盛んです。その理由は次のようなことでしょうか。
1. ボタンやベルトなどのアクセサリー類も国内生産されているので、原材料のすべてを国内調達できること
2. ヨーロッパ連合と関税同盟が締結されているためヨーロッパへの輸出コストがおさえられること
3. 地勢的に、ロシア・中央アジア・中東・アフリカ・ヨーロッパと5つの大きな市場に近いこと
1は、繊維産業に特化した理由ですが、2・3は、他の産業にも当てはまり、近年全方向への輸出が増えている傾向があります。
繊維産業に限って言えば、最近中国などに押されている状況はありますが、2019年度の繊維品の輸出額は99億ドル、総輸出額の約5%を占めています。(ITHIBイスタンブール繊維産業輸出協会)
こういった下地があったこともあり、まずは縫製技術を持っている繊維産業の企業がマスク生産に参入してきました。世界的にパンデミックが始まった2020年2月には、既にマスクの輸出が急速拡大しました。トルコ統計局のデータによると、2019年2月のマスク輸出額は98,000ドルでしたが、2020年の2月には2300万ドルで、236倍と爆発的に増えています。
トルコで最初の罹患者が見つかったのは3月に入ってからだったので、生産されたマスクは、2月には主に中国、ドイツなどに輸出されていました。3月に入ってトルコ国内でも罹患者が出始め、4月には外出時にマスクをつけることになってからは、トルコ国内でも品薄状態になっていました。
こういった中、トルコでも国がマスクの配布を始めました。トルコに居住している人は国民であるかどうかを問わず、申し込めば5枚ずつマスクをもらえました。マスク受け取りの通知が来たら、最寄りの薬局で見せるだけでもらえたので、受け取りも簡単でした。配布されたマスクは、国の機関が生産したものでした。
トルコでは、2020年の3月以降、民営企業に対するマスク生産奨励が実施されただけでなく、国の各機関もマスク生産を実施しています。
・「青年スポーツ省」管轄の青少年センター
・「国防省」管轄の縫製所
・「保健省」管轄化の病院付属機関院
・「法務省」管轄の刑務所
・「産業技術省」管轄の機械化学産業機構
など、多彩な機関でマスク生産がおこなわれ、「文部省」管轄の実業高校50校では、毎月200万枚のマスクを生産しています。
2020年9月には1,000以上の民営企業もマスクを生産しており、昨年までは年間生産業が5千枚前後だったところ、同じ量を毎週生産するようになっているといいます。夏以降、生産されたマスクの最大輸出国はドイツなどヨーロッパ諸国が占めています。2020年前半期の使い捨てマスクの輸出額は10億5100万ドルとなり、一大マスク輸出国の仲間入りを果たしました。
最近、トルコでもまた罹患者が増え、週末や夜間の外出制限が実施されています。外出時にマスクをしていないと罰金刑となっています。マスクの重要性が、健康面でも、経済面でも認識され始めているように感じるこの頃です。
記事出典元:
ITHIB (イスタンブール繊維産業輸出協会)
https://ithib.org.tr/tr/bilgi-merkezi-istatistik-aylik-ihracat-kayit-rakamlari-2019.html
Anadolu Ajansı(アナドル通信社)
マスク輸出状況ニュース記事
https://www.aa.com.tr/tr/ekonomi/turkiyenin-en-fazla-tek-kullanimlik-maske-sattigi-ulke-almanya-oldu/1947697
TRTHaber (TRTニュース)
https://www.trthaber.com/haber/koronavirus/turkiyede-haftada-50-milyon-maske-uretiliyor-514410.html
2021/01/11
海外だより:トルコより
土窓愉見
トルコ在住