日本でも報道されているように、2020年10月30日トルコ時間14:51にトルコ第3の都市イズミールの沖合で地震がありました。
イズミール地方は、1900年から現代までの120年間でマグニチュード4以上の地震が695回あり、1900年以前にも332回の大地震の記録があるところです。今回の地震があってすぐに安否を尋ねるために連絡を取った友人は、生まれも育ちもイズミールという60代の方です。
「自分は地震に慣れていると思っていたけれど、今回の地震は今までに体験してきたものとは全く違った、1分以上揺れが続いて、本当に怖かった。」とおっしゃっていました。彼女の住んでいる建物は破損もなく、棚なども倒れることなく被害はなかったというのが幸いです。
とはいえ、今回の地震は2020年に世界中で起こった地震の中で最も死者の多い地震となってしまいました。9日経った11月8日現在、死者数は115人、けがをした方は1035人で、23人が入院治療している状況です。
倒壊した建物からの救出作業はすべて終了し、建物の残骸を取り除く作業に入っていると、AFAD(トルコ内務省災害緊急事態対策庁)から発表されていますが、この9日間にマグニチュード4以上の大きさの余震が46回、微震も加えると2,846回の余震があったといい、まだ予断は許さない状況のようです。
今回も含めて、トルコで起きた地震の死傷者の多くは、建物の倒壊が原因となっています。そのため、地震が起きた際の最初の対応が異なっています。日本で生まれ育ち毎年地震の避難訓練を経験した私にとって、まず机の下に隠れるが常識でした。しかしトルコでは、地震が起きたらまず壊れなさそうな家具などの脇にうずくまるか横になるようにとアナウンスされています。
壁が倒れてきたり上から天井が落ちてきたりした際に、丈夫な家財の脇には三角形の隙間ができる可能性が高いからです。この三角形の隙間は「命の三角形」と呼ばれています。まず、そういったところに身を寄せて、揺れが収まったところで外に逃げるのがベストなのだそうです。
今回、倒壊した建物はすべて1999年以前に建てられたものだということでした。1999年は、死者1万7千人超というトルコ史上最大の被害が出たイズミット地震が起きた年です。この地震を境に、トルコでも地震対策が次々と出されてきました。建築基準も強化され、今回の地震でもこの新たな建築基準を満たしている建物はほとんど被害がなかったと言われています。
ただ、今回倒壊した建物の中にも、1階が商業施設になっている建物で柱が抜かれていたものがあったという報道があります。柱を抜いてしまったら、地震がなくても建物が倒壊する可能性があるというのはわかりきったことのように思いますが、毎年のようにこういった事件があるのは残念なことです。
地震対策については日本が非常に進んでいるという認識が、トルコでも浸透しています。地震学者の中には、日本の大学で学んだ方々も多く、耐震建築や緊急地震速報などをテーマとした、日本の技術を紹介するワークショップも実施されています。
政府レベルでも協働体制があり、2018年には、日本政府とトルコ政府の間で「防災協力に関する覚書」が調印されました。災害緊急時の対応をおこなうAFADで日本の国土交通省主催の防災に関するイベントが開催されることもあります。
イスタンブールの橋は陸橋なども含めて、ボスポラス海峡にかかる第2大橋を架けた日本のゼネコンが点検修理をおこなっていたのも、信頼の表れのように思います。実際私も、日本が架けた橋、日本が堀ったトンネルなら安心な気がしています。
参考サイト:
2020年11月8日付けの被害状況
https://www.nethaber.com/gundem/izmir-depreminde-olu-sayisi-115e-yukseldi-34958
https://www.milliyet.com.tr/gundem/afaddan-son-dakika-izmir-depremi-aciklamasi-6348916
イズミール地域の地震のデータ
http://www.koeri.boun.edu.tr/scripts/lst2.asp
AFAD
https://deprem.afad.gov.tr/downloadDocument?id=2064
2020/11/09
海外だより:トルコより
土窓愉見
トルコ在住