「外為推進は、事務と営業が両輪である!」外為をやっていると必ず聞かされるフレーズです。これはどこかの偉いさんの格言などではなく、上司や先輩・誰かしらが、言い続けるいわば常套句と言えます。
しかしこの言葉、外為を生業としていた者からすれば、言い得て妙のところが有ります。今回はこのご紹介をしてみます。
さてこのフレーズですが、意味するところは簡単に言うと、銀行の外為推進には、営業面でのマインドやスキルだけではなく、事務知識も必要である。こう言った意味になります。
しかし、私から言わせると少し違います。「事務知識も必要」ではありません。「事務知識は必須」なのです。事務知識が無ければ、外為の話は全く出来ないのです。そこに必要なものは外為法を始めとする諸規制も勿論ですが、行内事務手続きのように、銀行内の決め事も必要です。
さらには外為センターや店内他係とのハウスルールも然りです。お客様との折衝ではこれらの知識を総動員する必要があります。具合的な例で見てみましょう。
例えば、新規先で首尾良く実権者と面談できたとします。あれやこれやの流れから、「この会社、輸出信用状取引が有るようだ。」こう感じ取ったときの想定です。これはチャンスです。何とか取り込みたいですね。こんな時の定石は、現状取引に不満がないかのヒアリングです。どんなお客様でもそうですが、100%満足している人はまず居ません。銀行員から今の銀行に対する希望や不満について聞かれれば、何かしら不満或いは愚痴が出てくるものです。もしなければ、それは満足なのではなく、こちらと取引したくないだけです。
さてその発言の中身は曰く
・「信用状が中々入手できない」
・「信用状の内容について質問しても満足のいく回答がない」
・「買取に時間がかかりすぎる」
・「金利や手数料が高い」、
・「アンペイド(不渡りのことです)の対応が不親切である」
等々。いろいろ出てきます。
例えば「信用状が中々入手できない」という不満の場合です。私はこんな話が出てきた時には、頭の中で次のように考えます。「オープニングバンク(信用状開設銀行のことです)はどこだ。」「コルレスがあれば、ダイレクトにアドバイスが来るのに。」(直接信用状を自分の銀行に送って貰うの意味)「(持込を条件に)通知手数料を免除するのに」これらのアイデアは事務知識が無いと、考えつかないことばかりです。
逆に事務知識があれば、これらの問いかけには即答できますし、無ければこちらから質問を装ってセールスもできます。またこんなやり取りすれば、その場で主導権を握れます。
皆さんもご経験がお有りと思いますが、相手が自分に一目置いてくれると、交渉事は上手く行くものです。つまりセールス成功につながるわけです。
さてこの事務知識。丸覚えしたくてもとても出来ません。かといってその都度調べるなんて、お客様の前で出来るわけありません。結局が場数を踏むこと。そこで得た教訓を元に必要な知識を仕入れる。陳腐ですが是に尽きると思います。
今回も紙幅も尽きたようです。他の話題は稿を改めて。
2020/09/22