秋の味覚の高級食材の一つ、マツタケがレッドリストの絶滅危惧種に指定されました。
日本ではすでにかなり数が減っていて、国産マツタケというと超高級品!スーパーで売られているマツタケは韓国産や中国産、アメリカ産など外国産です。
日本国内では減少しているものの、世界ではまだ十分な量が生育しているかと思いきや、世界中で減少していたようです。
天ぷら、炊き込みご飯、土瓶蒸し・・・もう食べられなくなるの?と心配になりますが、どうやら絶滅危惧種に指定されたからといって、市場から消えてなくなるわけではなさそうです。
レッドリストとは?
IUCN(国際自然保護連合)が作成する、「絶滅の恐れのある野生動植物の種のリスト」です。ICNUは国、政府機関、NGOからなる国際的な自然保護機関で、レッドリストの作成、自然を守り価値を高める活動、地球課題に対する解決策の模索、国際機関との連携といった活動をしています。
レッドリストは、動物、植物、菌類の地球規模での保全状況に関する世界で最も包括的な情報源となっています。実際の絶滅危機を客観的・s詳細に評価しています。それぞれの種の置かれた環境や個体数など様々な観点から評価を行い、9つのカテゴリーに分類しています。
【EX】Extinct/絶滅
【EW】Extinct in the Wild/野生絶滅
【CR】Critically Endangered/深刻な危機
【EN】Endangered/危機
【VU】Vulnerable/危急
【NT】Near Threatened/準絶滅危惧
【LC】Least Concern/低懸念
【DD】Data Deficient/データ不足
【NE】Not Evaluated/未評価
上に行くにつれて絶滅リスクが高まります。絶滅危惧のカテゴリーは「深刻な危機」「危機」「危急」の3つです。野生での高い絶滅リスクに直面している種が指定されます。有効な保全対策をしなければ、絶滅が予測されるカテゴリーです。
マツタケの場合、VU「危急」に分類されました。減少した理由の一つは、生育に適した環境の減少です。マツタケは松の根に菌糸を伸ばして育ちます。単純に松林が減少しているだけでなく、マツタケは落ち葉や枯れ枝が取り除かれた貧栄養状態の松林を好むため、人間が山に入らなくなり、マツタケ好みの環境が減少したことが背景にあります。また、マツクイムシによって多くの松が枯れてしまったことも原因のようです。
レッドリストには法的拘束力はありません。しかし、法的拘束力のあるワシントン条約(CITES)やラムサール条約などを改正するためのガイドとしても用いられています。ワシントン条約は野生動植物の国際取引を制限する法的拘束力があります。附属書によって管理されています。附属書は3段階に分類されており、それぞれに取引の内容が決められています。ワシントン条約は国際法なので、これに紐づく国内法が「種の保存法」です。
参考コラム:「お土産にもワシントン条約が!?」
https://www.rakuraku-boeki.jp/column/moto_tsuukanshi/2017-04-01
IUCNのレッドリストは全世界での評価を行っていますが、日本国内での評価は環境省が行っています。それぞれ独自に評価していますが、環境省レッドリストはIUCNの評価基準に準拠しています。また、都道府県等自治体で独自に評価を行っている場合があります。
レッドリストに指定されても、すぐに食卓から消えてしまったり、商取引ができなくなるわけではありません。しかし、このまま減少し続ければ、マツタケだけでなく、すでに指定されているウナギやクロマグロも食べられなくなります。
2020/08/05
simalu 元通関士の実践コラム