外為新規は過去にも触れましたが、中身まで立ち入りませんでした。
今回この点を、少し詳しくお話ししようと思います。
まず新規先を獲得するには対象先が必要です。(当たり前ですが)ところがこの対象先を見つけるのが大変なのです。
街中をいくら探しても「当社は貴行の新規先です!」の表示なぞ、どこにもありません。そこでみんな知恵を絞ります。私も絞ります。
アレコレ考えたすえに、壺にはまると上手くいったのが、自店の取引先から探す方法です。これは効きます。
それでは具体的方法に話を進めます。なお純預金先は自店に決算書がない場合が多く、この方法は使えませんので省きます。
1. 自店融資先の中から回収専一状態の先を抽出する
回収専一とは当初の与信を打ってから、新たな与信を起こしておらず、与信残高が徐々に減っている取引先です。たとえ担当者がいても、個別にフォローはしてない場合が多いです。
2.抽出先の決算書を手元に用意する
この決算書は与信実行時点の古いもので構いません。上場企業は決算短信などで財務内容は把握できますが、未上場企業は未公表が普通ですし、経常取引でもなければ、銀行にわざわざ最新の決算書を持ってきてはくれません。要は古くても構わない。有り物で始めようというわけです。
3.ここから決算書の中身を見ていきます
(1)為替差損益の表示はないか。
損益計算書(P/L)を見て為替差損益が計上されている場合、外貨建取引の存在が推測されます。外為取引とは断定できませんが、もし貿易関連でなくても、自店他係にネタとして引き継げればOKとします。
(2)貸借対照表(B/S)を見て、外貨建資産・負債がないか調べる。
上記(1)に比べてやや歩留まりは悪いですが、これが記載されていると、会社として外貨取引を行っていることになります。貿易関連でない可能性も多々なのが難点ですが。使えます。
(3)換算為替レートの表示は有るか。企業によっては外貨建て取引を都度実勢相場で換算せずに、予め換算レートを定めこれで仕訳していき決算時点に精算する。このような方法を採る企業もあります。この場合決算書上にその換算レートが記載されているので、この表記があると、経常的な外貨建取引の存在が推測できます。
4.自店担当者に仁義を切って軒並み訪問を実施する
一連の作業で浮かんだ対象先。今度は実際に訪問します。なぜ仁義を切るかと言えば、うっかり訳あり先や因縁あり先など、訪問すべきない先柄に飛び込まないようにするためです。このステップを省略すると、とんでもないことになります。さてこの方法の良い点は、既に相手が自行と取引がある点です。これなら門前払いの心配がありません。いきなり訪問して訝しがられるかもしれませんが、少なくとも実権者との面談は出来ます。
実際に私がやってみて大企業は流石に無理ですが、中堅・中小企業であれば与信開始から時間が経過していることもあり、外為ネタだけでなく融資材料や運用相談なども出てきました。出てきたネタは外為以外は、融資担当者にフォローを依頼します。
この方法で自店担当者・企業双方から感謝されたこともあります。唯一の難点はこの取引先から外為持込が実現しても、本部からなかなか新規先とは認めてもらえなかった点です。融資取引が有るのなら既存先だろうというわけです。この点は、本部担当者と本当によくやり合いました。
2020/07/24