我々と外為先や融資先との取引では、銀行規定料率での取引はほとんどありません。何らかの優遇条件を付けて取引を行います。
これは他行肩代わり防止のためです。皆さんから見れば取引条件は銀行の言い値通りでは、こう思われるのでしょうが、実際は違います!
銀行は安定収益を確保の観点で、優遇条件を提示します。そして何もなければ、この条件で取引は継続します。しかし決まって年に何件かは見直し要求が来ました。内容はほぼ同じ。ダンピングの要請です。
今回は、私がこの攻勢をどうしのいでいたか。このお話をします。
そもそもこう言った取引先のダンピング要請の裏には、いつも他行の影がちらついていました。つまり新規を狙う銀行が、ちょっかいを出しているのです。そしてその提案内容はどれもワンパターンでして、こちらの取引条件に、幾分優遇を上乗せ。これがお約束でした。
さてこの申し出に私がどう対応したかです。先ずは検討すると一旦引取ります。冷却期間を置きます。店に戻ってから、取引状況と採算状況を確認します。つまり落としどころを予め検討しておくわけです。もちろん上席には、交渉権限を貰っておきます。その上で先方に電話です。最短での面談の約束をします。面談を開始してから検討結果を話す前に、自行の強みを強調します。
ここが肝になるので粗末にはできません。
1番目は外為処理のスピードが早いこと。例えば午前中店頭持込であれば、当日中に輸出書類を海外発送する。或いは15時までであれば外国送金を海外に向けて出電する(円建てと国内外貨送金は除きます)。輸入書類を日本に到着した翌日に引き渡しを可能にする。等々。この中でも輸出書類の当日海外発送は評判が良く、感触の良さから逆にこちらが新規先を攻めるときに、効果的に使わせて貰った経緯があります。
2番目は海外拠点網の充実です。海外拠点が充実していれば、リアルタイムで現地情報が入手できます。また海外進出を考えている企業へのサポートは、得意とするところです。特に東南アジアや中国拠点網は、ストロング・ポイントでした。
3番目は良好な取引関係のアピールです。支店担当者含め当社への対応は丁寧迅速であり、過去からも何の問題も無い。ここを強調しました。
これらを述べた後に、今後とも良好な取引を続けたいのでと前置きして、一部取引条件を見直す旨お話をします。例えば大口為替の優遇上乗せや系列シンクタンクの会費優遇、為替予約変更手数料の免除など、メリット感が出るものを提示しました。今の状態を続ける安定感と、見直しによる今後のメリットを加味して、検討を迫るわけです。
この方法ですと単純な条件交渉に比べて、顧客の納得感は高く、再交渉になる事は殆どありませんでした。翻って自分が顧客ならば、折角スムーズにやっているのに、あえて波風を立てたくない。これが本音です。そんな気持ちでいたときに、二つの側面からメリットが提示されれば、納得して提案を受け入れると思います。
誰でも、もし変えて何かあったら嫌なものですから。今回はダンピング攻勢をしのぐ。でした。
2020/05/12