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らくらく貿易のサイトでは400語以上の貿易用語を解説しています。
その中でも検索数の多い用語ベスト9をピックアップしてトップページに掲載しています。トップ9常連はインコタームズ!そこで今回はD型と言われるDDP、DPU、DAPについて、解説したいと思います。
インコタームズとは、国際商業会議所が制定した貿易条件の解釈です。世界で利用されている国際貿易取引条件で、制定前は国ごと、商習慣ごとに貿易取引条件がばらばらで、トラブルになることもしばしば。制定後は共通ルールが明確になったことで、共通認識のもと貿易取引ができるようになりました。
10年に一度見直され、今年は改訂年。これまでのインコタームズ2010からインコタームズ2020が発効しました。D型と呼ばれるものは、過去に使用されていたものも含めると、DAF、DES、DEQ、DDU、DAT、DAP、DDP、DPUがあります。かなり多いですが、2020に残ったものはDPU、DAP、DDPです。
【DAP】Delivered at Place/仕向地持込渡し
危険・費用負担は買手が指定する場所で売手から買手に移転。荷卸しは買手負担。
【DPU】Delivered at Place Unloaded/荷卸込持込渡し
危険・費用負担は買手が指定する場所での荷卸し後に売手から買手に移転。荷卸しは売手負担。インコタームズ2010のDATが廃止され代わりに新設されたのがDAP。貨物の引き渡し場所をターミナルに限らず荷主指定場所にできるようになりました。
【DDP】Delivered Duty Paid/関税込持込渡し
危険・費用負担は買手が指定する場所で売手から買手に移転。荷卸しは買手負担。通関や関税等も売手負担。
上記3つ以外のD型条件はもう使えないかというとそうではありません。例えばあえてDATを使うなら、インコタームズ2010に拠ることを明記します。
買手にとって最大のメリットを享受できるのがDDP条件です。輸入地での通関や関税消費税の負担も含め、買手の指定場所までの費用負担、リスク負担を売手が負います。税関検査費用やターミナルでの保管料など追加で費用が生じた場合でも、買手にそれらの追加費用が請求されることはありません。買手は売手との契約価格にしたがって支払います。ただし、独自に追加ルールを設ける場合はその限りではありません。
また、注意すべき点はDDPが関税・消費税や輸入港から指定場所までの国内運送費用を含んでいるということです。輸入申告の課税標準価格というのはあくまで輸入港到着までの価格です。DDP価格で申告してしまうと、申告価格が高くなってしまい、本来払わなくていい関税・消費税までかかってしまいます。
そこで実務的にはインボイスにCIF価格と関税・消費税、国内運送費等の内訳を記載します。内訳が分からなければ、インボイス価格=DDP価格が申告価格になります。DDP条件の真逆の概念がEXW(Ex Work/工場渡し)です。EXWは工場から出荷した時点で買手に全ての負担が移転します。
インコタームズは危険負担、費用負担の線引きをどこまでするかが明確に示されています。トラブル回避に一役買っていますが、強制力はありません。また、貿易条件の共通認識ではありますが、契約の際はお互いに再確認は必要です。
2020/05/07
simalu 元通関士の実践コラム