よく質問を受けるのですが、ドル円相場に代表される通貨交換相場。
マーケットは同じ筈なのに、なぜ銀行によってレートが違うのか。
米ドルなど、各行全て為替手数料は1米ドルについて1円。こう明確に宣言しているので、この部分が銀行のもうけなのは明らか。
しかし出来上がったレートは違っている。これは変ではないか。こういった趣旨のご質問です。
我々は自分の銀行のレート表は、毎日必ず目にしますが、他所の銀行のレート表はまず見ません。(必要もありませんので)なので何となく他通貨(米ドル以外)は違っていても、米ドルは各行同じがガチだ、との先入観念があります。
この質問を頂いたことを機に、3メガバンクのレートを見てみました。例として米ドルT.T.S.(電信売り相場)を採りあげます。この相場は仕向送金や外貨預金の、円からの通貨交換に使います。
三菱UFJ @109.95
住友三井 @109.96
みずほ @110.05
(何れも2020年3月27日公表相場)
なるほど何れも違います。これは迂闊でした。
ちなみに他の通貨も見てみましょう。同日のユーロのT.T.S.です。
三菱UFJ @121.56
住友三井 @121.66
みずほ @121.77
でした。こちらは想像通りです。
全ての通貨を見た訳ではありませんが、違うのが前提のようです。
実は米ドル以外の通貨はその算出過程に於いて、米ドル仲値に各行独自のクロスレートを掛けて算出します。元の米ドルレートが違っている上に、クロスレートも先ずバラバラです。となると当然出てきた結果も違います。
つまりこの問題の本質は米ドルレートにあるようです。ここまでお話しすると、皆さんの中には別の銀行なんだから違って当然。こう判断される人も多いと思います。しかし外為畑の人間にとって少なくとも米ドルレートは、東京銀行(現三菱UFJ)に右にならえが当然でした。
9:50過ぎに東銀が米ドルT.T.S.を発表すると、他行は一斉にそのレートを参考に、自行のレートを発表しました。(正確には東銀のパクリそのものでしたが)それに比べて今のレート表は今昔の感があります。
ところで話は戻って冒頭のご質問ですが、このレート差は、各銀行の資金需要が反映していると思います。つまり3行の中で最も円安にドル円を設定したみずほ銀行は、この日、米ドルを売りたい姿勢が見えます。つまり買いたくないのです。
となると利用者から見れば各銀行の公表相場を見て、レート差を考えて行動することが考えられます。(いわゆる鞘抜きです)
しかし現実にはレートだけ見て、行動するわけではありません。外為手数料や自社の資金繰りなどを、総合的に判断することになります。更にこれらの相場が適用になるのが、1取引米ドル相当100千未満です。つまり大口取引は原則事情実勢に従う必要があります。また外貨預金にはもっときめ細やかなレート設定がされています。
つまりレート差で儲けようと思っても、余り上手くいかない。こう結論づけても大きく外れないと思います。
2020/04/25