銀行に当たり前のようにあった外為業務。
令和の時代。ふと見渡すとその痕跡はあるものの、よくよく見れば雲散霧消も同然の状況。
こんな外為業務がいくつかあります。
今回はこれらをご紹介したいと思います。
その一 T/C(トラベラーズ・チェック)
昔は海外旅行のお供と言えばT/Cでした。(外貨現金は盗難が怖い)外貨はチップ程度で、それ以上の金額はT/Cがお約束でした。今はクレジットカードが使えるので、T/Cの必要性は急減しました。それでも最近まで一部の銘柄は発売していましたが、今では邦銀は全て新規の販売を止めてしまいました。
既に販売済のT/C買取には応じてくれるようですが、T/Cの発行体銘柄や額面金額等で、いろいろと制約があるようです。
その二 外貨小切手
偽造・変造に泣かされました。お客様から出された現物を見て、先ず考えるのが、「これ本物?それとも偽物?」これです。持ち込んできたお客様の信用力には関係ありません。もし偽物を掴まされたら大変なことになります。
小切手を発行した海外銀行がコルレス先なら見本もあるのですが、コルレスが無ければそれも望めません。それどころかその金融機関が存在するのかどうか。そこから確認しなければなりません。本当に大変でした。
その三 (スワップ付)外貨定期預金
巷で見聞する外貨定期預金キャンペーンは、実はこの外貨定期ではありません。「アウトライト」外貨定期預金と呼んでいる別物です。アウトライトは満期日の外貨から円貨への為替予約を、予め取らない外貨定期預金のことです。
これに対して「スワップ付」外貨定期預金は、預入時に満期日の為替予約を取る定期預金を言います。預入時に解約の為替レートを確定させることにより、外貨建ながら実質的に円貨定期預金として運用する。これを可能とする手段だったのです。
ではなぜこの手法が絶滅したのか。それは簡単です。円金利と海外金利差がほとんど無くなったため、スワップを組むと満期時の円貨元利金が、預入金より少なくなるのです。確実に損する預金など誰もやりません。ですから絶滅したわけです。
その四 紙製の信用状
現在でもL/C(信用状取引)は僅かに続いています。しかしそこで使われる信用状はほとんど全てが、SWIFTメッセージによるものです。
しかし昔は違います。お国柄豊かな紙製信用状が幅をきかせていました。例えば印度やパキスタン、バングラディシュなど南アジアの国々と、サウジアラビヤやクウェート、ヨルダンなど中近東の諸国。それぞれ一目見ただけでどこの国の信用状か見当が付きました。
この利点は隠れ信用状条件と我々が呼んでいた、信用状の裏面記載条項を見落とさずに済むことです。
その五 テレックスを使った電信業務
インターネット全盛の今では想像も付きませんが、昔は海外とのやり取りは電話かテレックスでした。銀行間の取引もテレックスでした。その後SWIT.が普及していき、今では完全に主役交代です。
ごく一部の邦銀がSWIT未加盟金融機関との取引のため、或いはSWIFT.途絶時の緊急手段として、存置させていると聞きました。しかしこれも実利用はほぼ無いので、絶滅業務と言って良いと思います。
2020/04/13