銀行業務といえば窓口業務を頭に浮かべます。しかしお店の外での営業も立派な銀行業務です。
貸付などはジッと中にいたのでは、ろくな事がありません。時には一日中融資できそうもない人の相手をさせられます。
これでは大口案件や優良案件など夢の又夢です。翻って我が外為も、貸付に比べ事務比率が高いとは言え、やはり外に出なければ商売になりません。
そこで上席は若手に「外で新規を取ってこい!」こう檄を飛ばします。
ここで言う新規とは、外為取引を新しく始めてくれるお客様のことです。預金であれば口座新規、貸付であれば融資新規とも言います。
さてこの外為新規ですが、実は中々取れません。(当たり前お話しですが)先ず対象先が、テリトリー内にそんなにありません。20~30社あれば上々でした。しかしこれらの先も諸先輩アタック済であったり、他行がっちりガード済みで、お客様からけんもほろろ。
更に僚店も訪問中でバッティングしてしまい、「同じ銀行から何度も来るな!」「事前に交通整理してこい!」。
こんなお怒りを受けてしまい、新規どころではない事も何回もありました。要は散々な目に遭っていたのです。
かくてはならじと、街中を歩き回っているたある日、目に入ったのが貿易協会の看板。
貿易協会は勿論知っていましたが、自分は貿易業者でないと、スルーしていました。しかし溺れる者はなんとやらです。ふらふらと中に入ってみると、いろいろな情報が取れそうな貿易関連資料や、貿易セミナーや貿易研修のお知らせがあります。
なんか無いかなぁーとひとりごちていると、貿易協会の会報ファイルが目にとまりました。全ての号ではなかったのですがいくつかの号に、新規会員紹介という欄がありました。そこには新設の会社や転入してきた会社が載っています。これは他では手に入らない良質材料です。思わず「これはイケる!」そう思ってこの欄を必死にメモして店に戻りました。
メモをした各社を銀行オンラインで照会すると、そのうちの1社が当行取引ありと表示されました。(取引なしは純粋に新規です)どこの店かなと見れば、なんと自分の店が取引店です。しかし現実には外為持込はないので、この会社は預金か何かあって、外為はない状態です。
このパターンは他のどの場合よりも新規につながります。はやる心を抑えて、もう少し調べることにしました。調べると預金は有ります。しかし貸付はありません。これは訪問する価値大いにありです。既にお取引頂いているのですから、門前払いの心配もありません。
照会したペーパーを鞄に入れて、早速その会社へと向かいました。幸い社長がおられたので、今までのお取引のお礼を申し上げつつ、直貿の有無を尋ねます。すると商売は豪州ワインの輸入。決済条件は前払いの送金。持込は信用金庫(出資金払込先)。運転資金もその信用金庫から。ここまで分りました。小粒ですが良質案件です。
早速店に戻って上席に概略報告。その場で信用金庫からの取引肩代わり交渉の了解を得ます。ここからはスピードが命です。再度会社に飛び込んで、社長と膝詰めで交渉開始です。社長としては会社立ち上げ時の恩は感じるものの、海外送金が直接ではなくメガバンク経由の発信である点、手数料がやや高い点、処理に時間が掛っている点。これらにご不満をお持ちでした。
そこでこれらのご不満を解消する提案を差し上げたところ、目に見える改善になると大変喜ばれました。そこからバタバタと1ヶ月で、目出度く外為新規獲得となりました。
この会社とはその後も仲良くさせて頂いたので、めでたしめでたしなのですが、「柳の下にいつもドジョウはいない」とはよく言ったもので、それ以降なんど貿易協会に行っても、こんな話には出会えませんでした。
今回のお話しは、タイトルの末尾は!?ではなく?が正解のようです。
参考サイト:
横浜貿易協会
http://www.yfta.jp/
神戸貿易協会
http://www.kobe-fta.or.jp
2020/03/29