先日講義をした会場で「もう終わった話なんですが。」との前置きで、L/Cを受け取った後、社内で紛失してしまった。こんな話題が出てきました。
既に解決済とのことで、やり取りはそれ以上ありませんでしたが、皆さんにもお役に立つのではと思い、対応方法について採りあげて見ることにしました。
先ずL/Cの紛失ですが、昔に比べるとうんと少なくなりました。ただ今でも今回のように、社内で無くなることはあり得えます。そこで対応方法を順番にお話します。
【対応策その1】取り消して新規発行してもらう
先ずは教科書的には、これになると思います。L/Cは基本全て「取消不能信用状」です。しかし当事者全員の合意で、取消は可能になります。ここでいう当事者とは、発行依頼人(輸入者)、発行銀行、そして受益者(輸出者)の三者です。
この三者が取消に合意して、紛失した信用状を一旦ない物とします。その上で今一度、別L/Cを新規に発行して貰うわけです。ただこのやり方は煩雑な上に費用も掛ります。実際、私もやったことは一度もありません。画餅といえます。
【対応策その2】取消はせずに再発行して貰う
既に発行された信用状の状態はそのままにして、関係者全員の合意で、同内容の信用状を発行して貰うのものです。具体的な流れはよく知らないのですが、おそらく接受銀行のデータで、再発行されるのだと思います。ただ紛失した信用状を善意の第三者が取得した場合、係争となる可能性があります。
が、当該第三者は自らを正当な権利者として証明し得ないと、考えますのでこの方法は実務的にはあり得ます。私も再発行された信用状を見たことがあります。
【対応策その3】信用状の写しで買取して貰う
その1その2と異なり、この対応策では輸入国サイドは関与しません。あくまでも受益者(輸出者)の特別な依頼に、買取銀行が応じる形です。
大まかな流れは以下の通りです。
(1)輸出者が接受銀行から信用状の写しを貰う
(2)船積書類と信用状の写しを買取銀行に持ち込む
(3)買取銀行でチェックの上、船積書類を海外発送する
(4)信用状写しは輸出者に返却される
(5)海外発送された船積書類を、発行銀行がチェックする
(6)問題が無ければ決済が行われる
(7)買取銀行は決済金を受領する
(8)同時に輸出者への買取与信を引き落とす(ファイル・クローズ)
この対応策のポイントは、(1)~(7)の間で信用状原本を最も必要とする買取銀行が、これで対応可能ならば、一番時間と費用が掛らないのです。実際に原本が他行保管のため信用状写しだけ提示。こんな状況は良くありました。(意味合いは違うかもですが)
如何でしたかご参考になれば幸いです。
2020/01/06