都市伝説のようなものですが、銀行員の堅物ぶりを表す言葉です。では実際はどうなのか。外為目線も交えてお話ししていきます。
まず「1円違う」とは何のことでしょうか。
これは日計表の収支不一致を、極端な表現で表しているのです。
銀行は日々の勘定を、営業店毎に集計します。銀行全体の勘定はこの合計というわけです。
さてこの営業店の集計ですが、窓口営業が終わってから始めます。
一般的には15時過ぎ開始で、早ければ15時30分には結果が分ります。勘定が合えば、「一算合命」(いっさんごめい)とパチパチで終わりです。ところがここで不一致となると大変です。最初は「又かよ」位なのですが、いつまで経っても合わないと、店にいる全員で原因探しが始まります。
これが長引くと「徹夜する」ですが、実際はそこまでではありません。
まず大きく分けて現金勘定と振替勘定を調べます。現金勘定には外貨と円貨が有るのですが、扱い量が全く違うので、外貨で手こずることはありません。円貨は、窓口毎に出入りが分るので不一致原因は絞れます。残った振替ですがこれはもう一度取引を再現させるべく、入金伝票と振替伝票を付き合わせる作業をします。
以上の作業を手分けして行えば、夕食には間に合うように帰れました。ただ昔は全て手作業だったので、これらの作業全てに時間が掛り、結果として遅くなる。なんて事はありました。昔の話です昔の。
ここまで書き進めて、そう言えば外為が原因の不一致で、相当時間が掛ったことを思い出してしまいました。このコラムでも何回か書きましたが、外為勘定は全て円貨換算します。この場合の端数処理に注意が必要になります。端数を集めると1円になる場合は、1円の伝票が必要になるのです。
この処理、普通はオンラインで円貨が自動計上されます。ところがごく稀に自動計上がされないことがあります。その時には金額欄に星印が出ます。注意マークです。しかしこの星印、入出金を別々に起票した場合にも出てきます。この時は星印を別々に起票したせいだと思い込み、円貨調整をすっかり失念してしまいました。
折角の星印を単なる片振り伝票と思い込んだのです。結局この時は外為伝票を、全て手計算で数え上げるという荒業をして、なんとか発見することが出来ました。
今はほぼ無伝票化しているので、こんなことは無いと思いますが、なんとも大変なことでした。
2019/12/16