2019年の終わりに差し掛かった12月初旬。フィンランド共和国の首相が交代しました。
新しい首相となったのは、社会民主党の党員で運輸通信大臣のSanna Marin(サンナ・マリン)氏、34歳です。
今回はこの新首相誕生について紹介します。
首相辞任となった背景には、2019年11月に郵便局員の給与に対するストライキのスキャンダルがありました。
ストライキは、局員の給与を50%減という案に対するものでした。
しかし、国有企業の担当大臣がストライキを決行する以前の8月に、郵便局(Posti)が局員の給与を低額へ移行する計画を知っていたとし辞任。そして首相もこの計画を知っていたとして不信任とされ辞任しました。
突如の辞任で同じ社会民主党内で以前より次期首相と言われていたマリン氏に注目が集まり、党内投票で当確して首相となりました。
34歳の世界最年少の女性首相、ということで世界から注目を浴びていますが、本人は「年齢や性別については気にしたことはない。生まれながら人間はすべて平等」と話しています。
そのマリン氏。どんな人生を歩んできたのか。簡単に過去の歴史をみてみましょう。
1985年ヘルシンキ生まれ。マリン氏の幼少時代に父親のアルコール中毒で両親が離婚。その後、母親と同性パートナーと3人暮らしで育ち、自身の家族を「レインボー(同性)・ファミリー」と呼んでいます。
高校を卒業したあと、タンペレ大学にて行政学の修士号を取得。2012年の地方選挙でタンペレ市議会の議員に選ばれ、27歳で政治家デビューとなります。
2014年には社会民主党の副議長に選ばれ、翌年にはフィンランド議会に選出されました。今年2019年には引き続きフィンランド議会に再選出され、運輸通信大臣へ。元首相が病欠で2ヶ月ほど休職している最中に、副議長として党内をとりまとめた功績が今回の就任に至りました。
マリン氏のスタンスや周囲からの評価ですが、経営者より労働者目線。主義主張が明確でカリスマ性があり、メディアパフォーマンスやスピーチ能力に長けています。掲げる政策の重要項目は、社会的公正、平等及び気候変動と環境問題と、次世代のリーダーらしさがあると評されています。
そして偶然にも、社会民主党と連立を組んでいる他4党の党首たちもなんと女性。そのうち3党は、サンナ氏と同じく30代女性です。
その連立党は、左派同盟の党首で教育大臣の Li Andersson氏(32歳)、緑の党の党首で内務大臣の Maria Ohisalo氏(35歳)、中央党の党首で財務大臣のKatri Kulmuni氏(32歳)。もう1党は、スウェーデン人民党の党首でベテラン議員のAnna-Maja Henriksson氏(55歳)の女性党首5人による連立内閣です。
歴史的にも内閣メンバーの男女の構成比は同権という背景がありますが、2019年4月の選挙では200人中93人が女性で過去最多。女性首相は、今回で3人目です。
こう書くとフィンランドの政治におけるジェンダーギャップは少ないような印象があります。しかし現在、各政党とも伝統的な政治がうまくいかず、どうリニューアルするか模索している段階だといいます。
そのような背景の中、左派同盟を筆頭に高学歴の30-40歳代の女性をリーダーにすることで、伝統的な政治のイメージからヒューマニズムを重んじる政策へ転換しているところです。
過去にも30代の首相が登場していますが、今回は女性、しかも連立4党の党首すべてが女性ということで世界中からマリン氏内閣の手腕が注目されています。
首相自ら述べているように「年齢や性別は関係なく、政治家やリーダーになったら何をするか」が重要であります。
一時的な「女性首相の流行り」に留まらず、しっかりとした政策を打ち出し歴史に残る実績を作ってもらいたいと、いち市民として願っています。
画像出展元:
https://twitter.com/TNiskakangas/status/1203729511658995713
2019/12/23