新規オープンも増額のアメンドもしてないのに、月が変わるとL/C枠の残高がなくなっていた。
こんな不思議な話が外為の現場ではたまに起こります。
お客様でもご存じの方は何気にスルーですが、余りご存じないとの方は、銀行が勝手に枠を廃止(or減額)したと思い込んで、銀行に飛び込んで声高にクレームの仕儀と相成ります。
我々としてはこうなる前に、誤解を解きほぐさねばなりません。今回はこの不思議?な仕組みを説明したいと思います。
さてお客様を大不信に陥らせたL/C枠ですが、勿論、実際に消えたわけではありません。枠そのものは存在しています。ではどうなっているのでしょうか。
実は月が変わったので残高が増えて、枠一杯になってしまったのです。利用可能残高が無くなった状況なのです。
ここで皆さんは何故月替わりが残高に影響するのか?理屈がサッパリ分らん。こうお考えになると思います。これは当然の話です。そこでここにポイントを置いてお話しします。
枠が消滅してしまう条件は以下の2点です。
1. 与信対象通貨が円以外(例.USD,EUR)
まず100%この前提が必要です。
2.与信対象通貨と円貨の換算レートが円安方向になった
これも必要な条件です。この2条件が満たされると枠はどう動くのか。説明していきます。
まずL/C枠は通常円貨申請です。「極度100万円相当円貨」と言った具合に円貨で稟議を作成し認可を得ます。この枠をお客様に利用して貰うのですが、外貨建てのL/C開設依頼があれば、外貨を一定の換算率で円貨換算し、枠の残高に加算していきます。L/C決済が済めば逆に減算します。
つまり枠の残高は、お客様の意向とは無関係には増減しません。ところが唯一勝手に増減するのが、換算率が変更なる場合です。銀行の場合これが毎月発生します。この換算率は前月最終営業日の仲値が用いられます。
前月仲値が前々月の仲値と比べて円高方法に動けば、同じ外貨額でも円貨は減少します。逆に円安方向に動けば、外貨額は変化無いのに、(つまりお客様は無関係なのに、という意味です。)円価額が大きくなり、枠が一杯或いはオーバーになります。
この状態でお客様が新規L/Cをお持ち込みになると、残高が無く開設できない。こうなってしまいます。前日までの枠残高が突然増加しているのです。
お客さまにしてみれば「そんなこと聞いてないよ」の世界だと思います。もちろん銀行もこの事情を押しつけるわけにも行きません。
そこでL/Cの有効期限切れを見つけて、残高キャンセルをしたり、開設そのものを繰り延べして貰ったり、と苦心するのですが、たいていは無理筋の話となり、最終的には極度一時超過の稟議を、書くことになります。
この手の稟議は例え本部稟議であっても、認可は下りるのですが、ほとんどの場合認可条件に、「枠管理徹底のこと」がついてこの条件を見た上席から、叱責を受けるという嬉しくないイベントがお約束でした。
いまでも月初円安になっていると、枠オーバーの夢を見ることがあります。
2019/11/26