あれこれと噂のあった新インコタームズが、ようやく発表になったようです。英和対訳版は2019.10.末頃とのことです。
今回は外為実務の観点から、気づいた点をお話してみようと思います。
まず一番の注目点は、全体を通じて大きな変更点は無かった事です。
条件数は「11」と変わらずです(中身の改廃はありました)。2つのクラス分けも一緒です。あらゆる輸送形態に適した規則が7つと、海上および内陸水路のための規則が4つです。
これらを前提として外為から見て、どこに注目するか見ていきます。
1.EXW(Ex Works):工場渡し
無くなるとの噂があった条件ですが、条件として維持されました。L/Cでもよく見かける条件ですが、これからも使われるようです。
2.FCA(Free Carrier):運送人渡し
「陸上での引き渡し」と「海上での引き渡し」の二つに分かれる。こんな話もありましたが、やはり現行通り一つのようです。この条件はどこでも貨物の引き渡しが可能なので、使い勝手が良い条件です。我々もコンテナ船でのFOB代替条件として、理解して対応しています。
3.DPUの新設(Delivered at Place Unloaded):仕向地荷下げ渡し
売主が指定された仕向地に貨物を送って、荷下ろしまで行う条件です。荷下ろしまでのリスクを売主が負担するようですが、外為の現場ではDで始まる条件はなじみが薄く、この条件もそのまま受け入れるだけになりそうです。
4.DDP(Delivered Duty Paid):関税込み持込渡し
こちらそのまま維持されたようです。外為では余り関係ないのですが、この条件は二分割の話もあったのですが。そのままです。
5.FAS(Free Alongside Ship):船側渡し
元々ほとんどお目に掛ったことの無い条件でしたが、なぜかそのまま残ったようです。理由は明らかではありません。
6.FOB・CIFの維持
有る意味一番大きなポイントと思います。前評判では利用実態に即して、内容改訂の上であらゆる輸送に用いられるようになる。こんな噂が出ていました。これは大いに期待すべき事です。コンテナ輸送でも大いに使われているのですから、使い勝手の良いものに整備すべきだ。変更は大歓迎。だったのですが、結果は何も変更無いようです。残念です。
しかも、ということは、相変わらずコンテナ輸送には、不適切との烙印が押されているのです。これでは何度も問題提起されている、船積前のコンテナヤードにある、貨物の損傷リスクが放置される可能性が大いにあります。輸出のお客様に過去ヒアリングしたとき、輸出FOB保険や、国内の貨物保険の特約をされていた方はほぼゼロでした。問題ありの維持と言えます。
7.C and I の新設ならず
外為の現場では良く目にする条件ですが、日の目を見ませんでした。これも残念です。
以上ざっと見ていきましたが、今回の改定委員の所属国は、英、仏、独、米、トルコ、豪、中国とのことです。これではEU中心の考えや記述になるのは已む無しでしょうか。
以上インコタームズ2020についてでした。
(注)上記は私が個人的に入手した情報に基づくものです。ICC日本委員会の英和対訳本は未入手です。文中の正誤については、是非ご自身で確認くださるようにお願い致します。
2019/10/18