4年に一度行われるフィンランドの総選挙が、2019年4月に行われました。
今回は、以前より推し進めてきた抜本的な社会福祉政策を中止した中央党が、大きく議席を減らし政権交代となりました。
第1党となったのは、社会民主党。そのわずか1議席でEU懐疑派で反移民を唱える真のフィンランド人党という結果になりました。
今回は、フィンランドの選挙についてご紹介します。
★社会民主党とポピュリスト政党で連立政権となるか?
フィンランド共和国は、4年任期制の一院制議会です。全国を14ブロックにわけて、各ブロックから6〜33人選出します。
フィンランドの政党は、主に中央党、国民連合党、社会民主党、スウェーデン人民党、キリスト教民党、左翼同盟、緑の同盟、真のフィンランド人党です。
今回の選挙の焦点は、以前よりSOTE(Sosiaali ja Terveydenhuollon uudistus)と呼ばれる社会福祉と医療サービスの抜本改革を推し進めてきた中央党と、それを批判する野党との対立と予想されていました。ところが先月、中央党の現首相が突如この改革を中止すると発表。それを受けて、野党とポピュリストの代名詞である真のフィンランド人党の勢力が強まり政権交代となりました。
連立政権をつくることが多いフィンランド議会にとって、どの政党と組むかが次の焦点となっています。高税の支持者により公共支出を増やすことを躊躇しない第1党の社会民主党と、「国境のための投票」と呼びかけて、今後フィンランドが受け入れる難民を「ほぼゼロにする」と反移民・難民政策を打ち出している第2党の真のフィンランド人党との協議は、かなり難航すると予想されています。
★平均年齢46歳、半数近くが女性議員
さて、今回の選挙結果の概要をみていきますと、投票率は前回より2%増え72%となりました。当選した議員は、男性54%、女性46%。女性の議員数は、2011年の85人から92人と増加しました。当確議員が120名中、83名が新人議員。年齢をみると、一番多いのが、40〜45歳の35人、次いで35〜40歳の30人、55〜60歳の28人と続き、平均年齢が46歳となりました。ちなみに最年少は20〜25歳の1人、最年長は65〜70歳の3人でした。
さらに外国人候補者が60人ということで、こうした状況をみると、日本の議会と大きく異なることがわかります。
★有権者とコーヒーで交流
こうした結果に至るまでのフィンランドにおける選挙活動について少しご紹介します。
選挙活動は、主にメディアを通じて行われますが、日本のように街頭演説や車でアピールするという活動は行いません。街頭演説に似たような活動としては、ショッピングセンターなどの商業施設に各党のブースを設置して有権者を招いて政策の説明をします。特徴的なことは、その説明会の際に、有権者と直接交流できるようにコーヒーやお茶菓子、ソーセージなどが振舞われます。
また投票した後に、このサービスはVaaliKahvi(ヴァーリカフィビ)と呼ばれ、「民主主義の選挙に参政し、良い選挙結果でありますように」と有権者の権利を確認するとともに、投票が問題なく反映され、公平な結果が出ることを願う場があります。
このような光景は、民主主義国家としてのフィンランドらしい一面であり、歴史的に選挙活動の重要な行いでもあります。
経済不況が脱却し始めたフィンランド。しかしここへきて、福祉政策や税金問題、移民・難民問題に気候変動の問題と各党がそれぞれに掲げる政策をどうまとめ上げるのか。16年ぶりに政権を握る社会民主党の手腕にEU各国が注目しています。
2019/05/23