外為の現場では、様々なテクニカルタームが飛び交います。
例えば今回お話しする「Urgent」(アージェントと読みます)は、「至急扱い」の意味で大変よく使われます。
話し言葉としても、書き言葉としても、よく使われます。お客様も心得たもので、「この送金、Urgent!でお願い。」などと、店頭で依頼してきます。
さてこのUrgentですが、受け付けた我々が本当に大至急やるか。ンー。この辺りスイマセン。いささか???なのです。
その意味を、今回はお話ししたいと思います。
実はお客様から至急扱いの外為を依頼されたときに、我々はなぜ至急なのかを考えます。客観的に急ぐ必要があるのが、それを判断するのです。例えばL/C(信用状)の有効期限が今日だ!とか、当日発信が必要なオセアニア向けの送金が持ち込まれた!です。
さらに場合によってはお客様が急がないよとおっしゃっても、こちらの方で至急扱いにする場合もあります。具体的にはL/C(信用状)取引で、日本にある他所の銀行(在日他行のことです)に持ち込み制限が掛っている場合
(これを在日他行リストと呼んでます)とか、L/C(信用状)の有効期限の判定を買取国(日本からの輸出なら日本)ではなく、L/C(信用状)発行国(例えばアメリカとかオーストライアなど)で行う。
こんな場合はよほどのことが無い限り、すべて最優先で処理します。となると当然「Urgent」になります。ところが我々が見る限り、急ぐ理由が見当たらない場合があります。こんな時でも、黙ってそのままお受けします。
理由をお聞きしても良いのですが過去の経験からいって、具体的な事情がある場合は、そもそもその旨コメントがあります。それがないのは、急いで欲しいという包括依頼と解釈するわけです。
このタイプのご依頼は、お客様によってかなり偏りがあります。何でもかんでも「Urgent」とする会社と、全くと言って良いほど何も指示してこない会社とです。
いずれも基本はそのままお受けして、外為センターに送ります。一方外為センターでは、傘下営業拠点から多くの外為書類が来ます。当然「Urgent」も一杯やってきます。そんな状況で「Urgent」はどうか?実はほとんど役に立ちません。これ本当です。
我々がいの一番に手がけるのは、理由明記の急ぐ書類です。これは全ての行程で優先扱いを受けます。特に「Urgent」表示がなくても、至急の理由が目立つようになってますから、当然のことといえます。それ以外の書類は、到着順に処理していく場合が圧倒的です。この時点で単なる「Urgent」は至急にならないのです。
そこでお客様も知恵を絞って、「Urgent!Urgent!」とか、「Top Urgent!」とされてきます。これらはこちらも忖度して他の物より急ぐ場合もあるのですが、じきに他所の会社にも情報が伝わって、皆さんその表現となってきます。
こうなると他と一緒ですから特に優先されることはなくなり、やがてそんな「Urgent」表現も廃れてきます。そうなるとまたどこからか「Urgent」が出てくる。これの繰り返しです。
こうなると「Urgent」は本当に至急なのか。よく分からなくなってしまいます。なんとも皮肉なことですが、これが本当のところでした。
2019/01/31