2017年、フィンランドはロシア帝国から独立して100周年目を迎えました。
昨年は新たな100年を目指して新時代に入ったような雰囲気の一年でした。
その一年を振り返るかのように毎年12月6日の独立記念日には、一年間に活躍した人々が一同に会す機会があります。
それは独立記念日の祝賀会です。
大統領夫妻が、その年に活躍した各界の著名人を招いて、およそ2時間かけて握手会を行います。握手会のトップバッターは、退役軍人の方々が入場します。独立100周年を迎えられた退役軍人の方々は非常に誇り高く、この会に招待されることが光栄とおっしゃっていました。
移民である私のような外国人から見ても、この国を支えてきた方々を間近に見れることは、歴史を感じる瞬間でもあります。この他にもこの祝賀会が開かれる夕方以前には、戦争映画が放映されています。
祝賀会には、毎年テーマが設けられています。2018年は「環境」。
フィンランドは、豊富な森林に恵まれた国土のため、自然資源を利用して循環経済(サーキュラーエコノミー )の世界リーダーになると宣言しました。その取り組みが、前回のコラムでも紹介したようにスタートアップ企業を中心に展開され、2018年は経済界のさまざまな分野での目覚ましい活躍がありました。
テーマに沿った祝賀会会場のインテリアやお料理、そしてなんといっても毎年の目玉は、招待客の衣装です。特に女性のイブニングドレスにはちょっとした品評会があるほど。今年はスマホアプリで、どの著名人の衣装が気に入ったかと投票できるシステムまでできるほどの盛り上がりになりました。
イブニングドレスのトップバッターとして、やはりファーストレディーのドレスが気になります。今年のテーマに沿って、なんと白樺の木から作られた純白なドレスをお召しになっていました。白樺の木からとれたセルロースを溶解して繊維を生成。そこから縫製したドレスでした。デザインは、アアルト大学の学生が作ったそうです。
このほかにもプラスチック代替の素材を提供する会社の社長夫妻が招待され、彼らが着ていたイブニングドレスやクラッチバックの素材はすべてそのプラスチック代替の素材を使っていました。
こうした祝賀会を家族揃ってテレビの前で見ていると、日本の紅白歌合戦を思い出させるような光景でもありました。
しかしこの祝賀会に対する抗議デモが行われています。移民や人種差別、貧困層などからの抗議は毎年行われ、死傷者が出ないまでも、祝賀会の間のニュースとして放映されています。表の舞台と裏の舞台は、どこの社会でも存在するものであります。
次の100年に向けてあゆみだしたフィンランド共和国。今年2019年は、日本とフィンランドの外交関係樹立100周年を迎えます。1919年に日本がフィンランドを国家として承認。その結果、両国が外交関係を樹立することになりました。
私自身、この100年の最後の数年間に、架け橋的な立場になりました。次の100年の最初のステージでは両国に少しでも貢献できるよう、今年はいろいろ活動していきたいと思います。
2019/01/05