フランスのニュースで定期的に発信される情報が失業率についてです。
今回は、フランスの雇用システムとその実情についてレポートします。
フランスの雇用形態は、数種類あります。
・終身雇用契約のCDI
・期間限定雇用契約のCDDを中心に
・季節限定の労働契約であるSAISONNIER
・派遣雇用のINTERIMが主なものです
どの雇用形態にしろ、必ず契約書を交わされるのがフランスの雇用形態の特徴です。例えば、1日のみ通訳をするとしてもフランスの会社側から契約書が発行されます。申告をきちんとしていれば、事故などのアクシデントにあった時、保険でカバーできるのでお互い安心して仕事をするためには大切な書類といえます。
フランスの給与明細をみると、基本給与、残業手当などの後に20項目近く税金として差し引かれることが明記されています。失業保険、家族手当、老後手当などをはじめ最後の方は一体何に使われているのかわからない位です。
各項目の差引額は、自分の給与をベースに20%前後のものを引いているのですが項目も多くなると塵も積もれば状態になります。最後の手取りの金額をみると半分近くが税金として差し引かれています。
こんなに国に税金を払っているのだから、何か納得いかないことがあればフランス人はストライキや組合運動を起こして訴えています。税金をしっかり納めている意識が高いので、国の政策や政治にも敏感に反応するのです。
しかし、有給休暇などはきちんと消化できるシステムになっているので働きやすい面もあります。
「人件費がフランスは高い。雇用者を1人増やすごとにまた税金を払わなければいけない。」
これはよく経営者の方が口にしている言葉です。
そして、フランスの会社経営者を悩ませるものはスタッフの管理です。フランスでよく耳にするのが「病欠」です。身体的な病気から、精神的な病気まで事情は様々ですが、病欠で一定期間仕事に従事できない状況がわりと頻繁におきるのがフランス。
お店を経営している知り合いは、
「朝、スタッフがきちんと全員そろうか不安になる時がある。」
と言っていました。
少数派ですが、
「私のかかりつけの医者は、簡単に病欠の証明書を発行してくれるので有り難い。」
なんて言葉も聞こえてきます。
一定期間の働いていた証明があれば失業保険をはじめ、病欠などでも国から最低限の保証がでる仕組みはありがたい一方、それを頼りにして仕事への意欲が下がってしまうケースも作り出しているのがフランスの現状です。
またフランス人は、
「仕事は生活のためにしているもので仕事のために生活をしているのではない。」
という考え方をしているので仕事はやるけれど組織に対する忠誠心の様なものはあまりないのかもしれません。
失業率の高さがニュースで頻繁に取り上げられるフランスですが、地域によってある程度の差はある ものの、雇用市場はきちんとあります。「仕事をしたいけれど仕事がない。」という状況ではありません。
「仕事をしても、税金でかなり持っていかれるし、自分の時間もなくなる。とりあえず失業保険がもらえるからその恩恵を受けて焦らず探そう。」というスタンスがスローな雇用市場を作り上げているのかもしれません。
仕事に対する意欲は、あまり感じられないフランス。しかし、ワークバランスの点からみると税金は高いけれど働きやすい状況は整っているように感じます。
2018/12/22