最近、新聞やネットニュースで見かけるTAGという言葉、初めて聞いた、という方も多いのではないでしょうか?
実は私もその一人。そこで、今回はTAGについてWTOやFTAなどと絡めて書きたいと思います。
TAGとは、日米間で交渉を開始することで合意した「日米物品貿易協定」のことで、「Trade Agreement on goods」の略称です。
日本政府は交渉の範囲を物品の輸出入に限る点で、サービスや投資の自由化に範囲が及ぶFTA(自由貿易協定)との違いを強調しています。
そもそも、世界の貿易ルールはWTOが先導していました。WTOでは全会一致が原則で、「すべての加盟国に対して等しく適応」しなければなりません。ある国とある国の有利な関税条件は他の国にも適応してくださいね、というものです。これを最恵国待遇の原則、といいます。
しかし、とある2国間交渉で成立した条件をすべての国に適応させるのは難しいことです。それぞれの国の事情があるので、困る国もあります。より自由な2国間交渉の場を設け、世界全体の自由貿易を活性化させるためには例外も必要です。
それが、WTOで最恵国待遇原則の例外として認められている、FTAです。近年はよりスピーディーな貿易交渉としてFTAが好まれる傾向にあります。ですので、交渉を物品に限るTAGも、WTOルールでいうところのFTAでなければ最恵国待遇の例外としては認められないことになります。
日本政府が国内向けにTAGはFTAとは違うと言っていても、WTOからすればやりたいことはFTAなんでしょ?という話です。
今のところ投資やサービス分野は協議の範囲外ですが、結局サービス分野も含めたFTAに持っていかれるであろうということは、多くのメディアでも言われています。
実際アメリカ側は、まずは物品交渉から始めて、合意を得られれば、次はサービスや投資分野などの「重要分野」に進める、といっています。
いずれ物品以外の分野の交渉に移るとアメリカ側が言っているにもかかわらず、日本政府がTAGという言葉を使い、「包括的なFTAとは違う」と主張していることに対し、FTAを警戒する農家への目くらましだの、ねつ造だのという批判もあるようです。
交渉が本格化するのは年明け以降になるとみられています。共同声明では「過去の経済連携協定で約束した譲許内容が最大限」と明記していますが、それではトランプ大統領がTPPを離脱して日米交渉をする意味がなくなってしまいます。
日本はどこまで踏みとどまれるのか、不利な条件を突きつけられても押し返すことができるのか、今後の動きが気になるばかりです。
2018/11/12