今年の夏は本当に多くの災害が起こりました。特に台風21号は近畿地方に大きな爪痕を残しました。
関西空港の滑走路、駐機場はほぼ全域の冠水。
港湾地区では
・コンテナの流出や転倒
・火災の発生
・ガントリークレーンの倒壊
・上屋の屋根の損壊
など、関西地区の空港・港湾の被害はとても大きなものになりました。
通常、台風前後にはヤードを閉鎖し、コンテナの固定など台風対策を行います。
もちろん、台風21号に対しても対策を行っていたのですが、高潮による影響が大きく、ヤードの冠水やコンテナ流出が相次いでしまったのです。
当然、貨物も大きな被害を受けています。水濡れや横転により変質したり、電化製品は壊れたり、流出で貨物そのものが無くなる場合もあります。このような被害を受けた貨物に対しては、その関税が減税又は払い戻しされます。
変質、損傷の場合の減税は、その貨物が従価税品なのか、従量税品なのか、または従価従量税品なのかによって減税の適用時期が異なります。
1.従価税品
・輸入申告から輸入許可(輸入許可前引取り貨物についてはその承認時)までの間に、貨物が変質、損傷した場合
・保税蔵置中の変質、損傷により適用税率が変更した場合
以上の場合に減税が適用されます。
輸入申告前の貨物については、価値の減少に基づいて課税価格(申告価格)を下げることで対応します。
2.従量税品
輸出港を出てから輸入許可の時までの変質・損傷に減税が適用。
3.従価従量税品
従価従量税品の税率は、従価税と従量税を複合したものと選択するものとがありますが、それぞれの要件に対応した方法を適用します。
また、保税地域にある貨物(輸入許可前)が「亡失」した場合、保税地域の許可を受けた者から徴収することになっています。しかし、災害などやむを得ない事情による場合、関税は徴収されないこととなっています。
*亡失とは、貨物が物理的に存在しなくなること。本来の性質、形状、商品価値等を失い、新たに製造する必要があると認められる状況にある場合のこと。
以上は輸入許可を受ける前の話です。輸入許可後の貨物は同時に納税もされていますので、減税ではなく、戻し税が適用されます。納期限を延長された貨物については、払い戻すべき額を減額します。
しかし、すべての被災貨物に戻し税が適用されるわけではありません。変質、損傷による戻し税が適用される要件は、「輸入許可後引き続き輸入許可を受けた時の蔵置場に置かれている場合」です。輸入許可時の蔵置場所から別の場所に搬出された貨物については、適用されません。
納付した関税の全部または一部の払い戻しを受けることができます。戻し税の要件はもう一つ、「災害その他やむを得ない理由による」ことです。輸入許可前の変質・損傷による減税が適用されるのはこの、「災害その他やむを得ない理由による」を要件としないのに対し、許可後の戻し税に対しては上記2つの要件を満たさなければなりません。
具体的な減税の計算方法と手続きについては、また次回以降にお話ししたいと思います。
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2018/09/29