今回のテーマは、「卵が先か?」「鶏が先か?」みたいですが、実は結構まっとうな話で、今でも十分注意を要する問題です。
あるときお取引先の中堅メーカーから、海外送金の依頼がありました。依頼書を点検しましたが全く問題無し。当日中に発信しました。
ところが2・3日後に海外から、この中堅メーカーからまだ送金が届いていない!こんなクレームが入ってきました。
外為をやっていると、こんな話は日常茶飯事です。
初動として依頼書の内容再点検。発信済SWIFTも確認。すべて問題なしでしたので、お客様にはその旨回答しました。加えて必要であれば電信料は負担願うことになるが、先方銀行に至急入金するように督促するが、とお話ししたところ、是非やって欲しいとのことでしたので、相手銀行にその旨発信しました。
折り返し返事が返ってきたのですが、送金は既に入金処理済。こんな意外な回答でした。
一方受取人からは、お客様へ再度、再々度の入金督促。これは一体どうしたことか?
今一度相手銀行にかなりきつい調子で、こちらは間違っていない。きちんと調べろと発電しました。すぐに先方から返電があり、そこで判明した事実です。
先方曰く、送金依頼に基づき支店番号・口座番号が一致した、口座に入金した。(当時はまだIBANはありませんでした)
こういうことでした。
こうなると日本サイドは全くチンプンカンプンです。やむなく受取人に銀行に出向いて貰い、送金内容を示す発信モニターを提示して貰いました。その結果驚くべき事に。
違う名前の口座に入金されていたのです。しかも相手銀行に言わせると、口座番号が合っているのだから、問題は無い。変更には応じるので申し出て欲しい。こんな具合です。違う名前の口座に入金したのに、間違いではない。猛烈な違和感を覚えました。
しかし、少し頭を冷やしてみると、別の見方が出来ることに気づきました。
海外送金は、すべて仕向銀行からの情報のみで処理されます。その情報に原則優劣はありません。しかも入金手続きは自動処理です。口座番号が一致すればそのまま入金する。これはあり得ます。日本の銀行であれば、全ての項目が一致した場合のみ入金する。これで運用されていると思いますが、全件上手くいくとは思えません。
結局、効率と効果の比較考量となるわけです。こう見ると相手銀行の主張にも、一理あるといえます。しかも今回の送金は日本側に全く問題ないかと言えば、一点だけ先方から主張されると弱い点がありました。
それは口座番号そのものでした。お客様は取引相手から取引銀行の合併が知らされていました。そこには新しい口座番号も記されていたのです。ただいつからとは書いてはなかったので、まだ大丈夫だろうと、今まで通りの口座番号を記入したのです。
今回のトラブルは、その口座番号が別人のものとして存在していた点にありました。この様な諸事情から、相手銀行には訂正を依頼しました。これ以来、取引銀行に関する情報が有ったら即座に、何もなくても年に一度は相手に確認する。
これをお客様にお願いするようになりました。日本流であればトラブルにならなかったのかもしれませんが、海外取引では日本流が通じないことも多々あります。
今でも教訓としている出来事です。
2018/09/14