先日、子供と一緒に、船舶の見学イベントに参加してきました。
多目的コンテナ船が港に寄港している間に見学するもので、夏休みの宿題のヒントにもぴったりなイベントです。
客船やフェリーなどのような旅客船に乗る機会はありますが、コンテナ船などの貨物船は港で外から見るくらいです。
実際に運航し現役で働いている貨物船に乗れる貴重な機会です。
他にも、タグボートや商船学校の実習船に体験乗船できるなど、夏は子供向けのイベントも充実しています。もちろん、大人の方もたくさん参加されています。
これらは、船員確保のための広報活動の一環です。一般社団法人日本船主協会が実施しています。
「船ってサイコ~2018」
https://www.jsanet.or.jp/event/event2018_summer.html
今年のイベント予定は募集終了してしまいましたが、毎年開催されています。
航海士の話を聞きながら、操舵室(ブリッジ)や機関室(エンジンルーム)、船長室などの見学をします。一方的に説明を聞くだけでなく、割と自由に質問できる時間がありました。興味のある人しか参加していない、ということもあり、活発に質問が飛び交っていました。
帰りには本や資料などたくさんのお土産をもらいました。息子はその資料などをもとに、自由研究の宿題を完成させました。
さて、「船員確保のための広報活動の一環」と書きましたが、実は日本人の船員はどんどん減っています。日本の外航海運企業が運航する船舶(日本商船隊)で働く船員のうち、日本人は約2,200人(2016年)です。1980年には38,000人を超えていたのですから、10分の1以下です。
なぜこんなに減ってしまったのか?
理由の一つに人件費削減があります。少ない人数で操船する船の開発が進んだことや、人件費の安い外国人(フィリピンやインドなどアジア地域出身者)を雇い入れることにシフトチェンジすることで、人件費を抑えたのです。
船会社が国際競争力を維持するためには、運賃の価格競争を勝ち抜かなければならず、日本の他の製造業と同じことが行われたのです。平成24年のデータでは日本商船隊で働く船員のうち98%がフィリピンなど東南アジア出身者となっています。
私たちが見学した船でも船長他、船員はすべてフィリピン人でした。船は日本籍船でしたので、日本で操船する資格をみなさん持っておられるそうです。
日本の船会社は質の高い船員を育てるため、アジア地域に教員派遣や支援、海運学校の運営などを行っています。しかし、同時に日本人の船員が減り続けることは安全保障上も問題があります。特に日本はエネルギーなど資源のない国であり、衣・食・住のほとんどを貿易、それも99%は船の物流に頼っている国です。この状況下で外国人に依存しすぎるのは有事において危険です。
そこで政府は日本籍船と日本人船員を増やすことにしました。これが上に述べた船主協会などの広報活動や、日本人船員を増やす取り組みをしている海運会社への税金優遇政策などです。同時に質の高い外国人船員の確保・育成のための活動も支援しています。
政府は日本人船員を10年で1.5倍程度に増やす目標を掲げていますが、いろいろ資料を見比べても増えていない状況です。特に、外航船では横這いか減少しています。
船員になることは、
・給料がいい
・しかも船上では衣食住のお金がかからないので貯金できる
・長期休暇がある
などのメリットがあります。
一方で
・長期間家に帰れない
・体質によって程度の差はあるが船酔いする
・船上ではネット環境がほぼなく娯楽が限られる
・航海中はずっと同じメンバー
などのデメリットもあります。
ネット環境を整えることも可能なそうですが、費用対効果を考えるとネット環境の整った船はまだまだ少ないそうです。船上生活ではコミュニケーションや同僚の様子をお互いに把握していることが重要ですが、ネットがあるとどうしても自室に籠りがちになり、仕事にも支障が出るのだそうです。
英語を使う職業に就きたい、という方にも船員はぴったりです。日本人メンバーだけが乗船することはないので、船上の公用語は英語です。
余談ですが、私の大叔父は船員でした。船長にまでなった人で、晩年は貨物船オーナーをしていて親族一のお金持ち。たまに会えば破格のお小遣いをくれたことが懐かしいです。いい時代に船員をしていた、ということもありますが、やはり給料はいい、という印象です。
今年の夏は終わろうとしていますが、今年逃した方は是非来年の夏こそは!
2018/09/05