前回のコラムでは中国が廃プラスチックや古紙など、資源ゴミの輸入を禁止したことをお話ししましたが、中国に限らず、資源ゴミの輸出入は比較的多く行われています。
また、中古電化製品を輸出販売したり、廃基板などから金属などを取り出し資源として販売したりするビジネスもあります。
しかし、資源ごみや中古の電化製品には有害物質が含まれていたり、それらが付着したまま途上国に廃棄する悪質な事業者もいました。
有害物質は人の健康や自然環境を損ねる恐れがあります。1980年代には有害廃棄物による事件が多発しました。そこで、有害廃棄物の越境移動の国際的なルールとして、1992年にバーゼル条約(正式名称:「有害廃棄物の国境を越える移動およびその処分の規制関するバーゼル条約」)が制定されました。日本は1993年に加入しています。
条約では、規制の対象となる有害廃棄物とその他の廃棄物を特定し、これらの廃棄物を輸出するには輸入国の同意が必要、としています。また、締約国は廃棄物を可能な限り自国で処分すること、不法取引の犯罪性を認め罰則を設けること、非締約国との廃棄物の輸出入を原則禁止とすること、廃棄物移動は移動書類を添付すること、などが規定されています。
*バーゼル条約締約国とは別にOECD加盟国間や2国間協定のある場合、これに基づく規制が適用されます。
条約で規制対象となるものは、最終処分又はリサイクルを行うために輸出入されるものであって、医療廃棄物や鉛蓄電池、廃油、めっき汚泥、廃石綿、シュレッダーダストなどです。原則規制対象外なのは、鉄くず、貴金属のくず、固形プラスチックくず、紙くず、繊維くず、ゴムくずなどです。
また、バーゼル条約の国内対応法として、バーゼル法と廃棄物処理法が施行されました。両法律でも規制対象物が示されています。バーゼル法はバーゼル条約を踏まえて規制対象物を決めており、有害性によって判断されます。廃棄物処理法では価値(無価物が規制対象)で規制対象かどうかを判断します。
国内法で規制対象のものを輸出入する際は経済産業省の承認・移動書類交付、環境大臣の輸出確認・輸入の許可が必要です。バーゼル法と廃棄物処理法は規制対象物が違うため、貨物によっては両方が適用となる場合もあります。また、条約に従い、輸出国への事前通告、輸入国・通過国の同意が必要です。
規制対象かどうかの該否判定は簡単ではありません。対象外リストに掲げられている貨物であっても、鉛やヒ素、ダイオキシン類など一定以上を含んでいれば有害廃棄物として規制対象になります。モーター、配電盤、基板など有害物質を含む可能性があるものは、分析を行い、バーゼル法の基準により判断します。そのほか、経済産業省・環境省では該否判断についての事前相談を行っています。
パソコンやテレビなど使用済み電化・電気機器をリユース目的で輸出する場合、輸出承認を得る必要はありませんが、梱包の仕方や破損・劣化等貨物の状態により、無価物とみなされます(無価物は廃棄物処理法で規制対象)。また、輸出先国で条約上の有害廃棄物と判断されたり、その国の規制で輸入禁止されていたりする場合は、不適正な輸出としてシップバックされる恐れがあります。
汚れや異物混入のないもの、破損しないような保護のされたもの、輸出先国の規制を理解すること、正常作動性を確認したものであることも輸出のポイントとなります。
経済産業省HP:バーゼル条約・バーゼル法の概要、仕組み、手続き等
http://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/admin_info/law/10/bsimple_judgmentsys/outline.html
2018/06/05