保税地域という言葉をご存知でしょうか?
保税地域とは、簡単に言うと、外国貨物を外国貨物のまま置くことができる場所です。
外国貨物とは、これから輸出しようという貨物であれば輸出許可後の貨物、輸入してきた貨物であれば輸入許可を受ける前の貨物のことです。
「保税」という言葉が示すように、関税・消費税など輸入の際に発生する税金を留保できる場所、という意味もあります。そして、原則として保税地域から貨物を引き取る時に関税などを払います。
保税地域には5つの種類があります。
1.指定保税地域
2.保税蔵置場
3.保税工場
4.保税展示場
5.総合保税地域
1と2は外国貨物の積みおろし、運搬、蔵置ができる場所です。特に指定保税地域は税関手続きのための蔵置場所で、税関所在地の近くにあります。国や都道府県など地方公共団体が管理・所有する土地で、財務大臣指定により設置されます。だれでも自由に安く利用してもらうため、長期間の蔵置が認められていません。一方、保税蔵置場は原則2年の蔵置が認められており、税関所在地近くに限らず、内陸地にもあります。
3は外国貨物の製造・加工ができる場所です。認められた期間(原則2年)内に製造・加工し、製品を外国に送ります(積戻し)。保税工場と保税蔵置場が併設されている場合もあります。食品や石油製品、機械など、日本でも様々な製品が製造・加工されています。飛行機内で提供される機内食は保税工場で加工されていたりします。原材料は外国貨物だけでなく、日本国産の原材料を使用することも認められています。これを内外貨混合使用と呼びますが、その場合も全量外国貨物とみなされます。
4は外国貨物を展示する場所です。国際展示会や博覧会などではこの制度を利用して行われることがあります。
5は2から4の機能をすべて併せ持つものとして指定された場所です。通常なら保税地域間の移動は保税運送という手続きが必要ですが、総合保税地域内では手続きなしでも外国貨物の移動ができます。もともと保税蔵置場や保税工場が集まった地域に対応する制度として創設されましたが、あまり多くはありません。
保税地域が設けられた目的は、「輸出入貨物を法の規制下に置くことにより、秩序ある貿易を維持し、関税などの徴収の確保を図るとともに、貿易の振興及び文化の交流などに役立てること」です。
「貿易の振興及び文化の交流」とあるように、文化交流のためにも保税地域は利用されています。例えば美術館や国際展示会などでは保税展示場の承認を得て美術品などが展示されています。保税展示場への搬入には展示等申告書を税関に提出して承認を受けます。私も旅行先の博物館で「保税展示場」と書かれた立て札の先にある清や唐の時代の陶器を鑑賞したことがあります。その時、これらの展示品は外国貨物でこのロープの先は保税地域なんだなぁと一人感慨にふけっていました。(何を興奮しているんだ?と家族には理解されずです。。。)
ちなみに、展示会に外国貨物のまま展示する方法はATAカルネを取得する方法や再輸出減免税で申告する方法もあります。この場合、展示会場が保税展示場の承認を受けていなくてもかまいません。
機内食の加工や美術品の展示など、「保税地域」を身近に感じられる場所もあります。港湾地区を走るトラックを見かけて外国貨物の保税運送中なのかな、などと考えてみるのもおもしろいかもしれませんね。
2018/03/27