皆さんに銀行の外為についてイメージを聞くと、
・「外国通貨のディーリング」
・「海外とのデータ通信」
・「海外との資金決済」
・「日本企業の海外進出支援」
等々、いろんな答えが返ってきます。
どれもその通りだと思います。これらは銀行の外為業務(国際業務も含む)そのものです。
しかし実際に外為をやっていて私が日々感じたのは、同じくらい重要なことが別にある。この気持ちでした。
それをお話しするのが今回のテーマです。さてそれでは、いったい何が重要だったのでしょうか?
ここで勿体ぶってもしょうがないので、勿体ぶらずに申し上げます。それは「書類との格闘!」でした。私は入行4年目で初めて外為業務を担当しました。それまでの3年間は銀行業務全般のトレーニーだったので、この時初めて銀行担当者らしい業務についたことになります。
そしてその時の仕事が「輸出チェッカー」でした。この仕事。一言でいえば、お客様が作成した船積書類を点検して、海外の銀行に発送する仕事です。(簡単すぎる説明ですが)
仕事に対する時間の制約が比較的ゆるく、お金のやり取りも記帳方(きちょうかた)と呼ばれる、専門の担当者がやってくれるので、初任の外為担当者にうってつけだったのです。
とはいえ海外に送る書類ですから、日本語で書かれたものなど一つもありません。ほとんどが英語で、フランス語やスペイン語も良く混じっていました。英語は兎も角、フランス語やスペイン語はちんぷんかんぷんです。
辞書と首っ引きで日々書類と格闘していました。(これは頭脳面の格闘といえます)
また書類のボリュームと金額は全く関係ありません。金額が米ドルで1百万ドルを優に超えるのに、紙切れ(インボイスのことです)2・3枚の書類もありました。逆に数千ドルなのに書類は段ボール箱いっぱい。こんなこともありました。
日々商社やメーカーから持ち込まれるこれらの書類を点検して、海外発送できるように梱包してセンターに担ぎ上げると、外為は書類との格闘だと実感しました。(これは体力面といえます)
こんな頭脳・体力両面の格闘が必要な外為業務に、それから30年余り携わってきましたが、営業担当となっても、「営業と事務は外為の両輪」と言われ続け、書類との格闘は続きました。
輸入を担当していたころは、海外から紙質や様式がまちまちな書類が日々到着し、書類の山を捌く仕事に日々忙殺されました。今でも街中でDHLやOCS、FedExの営業車を見るとお世話になったこれらの車たちに、ご苦労でしたと声を掛けたくなります。
IT化により銀行でもペーパーレスが進んでいますが、外為業務と書類のつながりは、まだまだ続きそうです。
皆さんも外為の話が出たときに、「外為は書類との格闘だ!」と、一言つぶやいて頂ければ、このお話をした甲斐があります。
2017/12/13