先月、とある財団法人で、小口輸入事業者向けセミナーがありました。偶々そこで講師をする機会があり、海外送金のお話しをしました。
銀行の実情にも触れた内容にしましたので、皆さんのお役に立つのではと思い、二回に分けてご紹介いたします。
先ず一回目の今回は、海外送金と国内送金の違いです。
両者の違いは「ものの本」には詳しく書かれており、皆さん、いまさらと思われるかもしれません。
しかし銀行の窓口で海外送金を受けると、ここは本当にポイントだなあ。と思う点があります。皆さんは、何だとお思いになりますか?
市販本やテキストには、いろいろなことが載っていますが、この点はあまり触れられていません。では一体何でしょうか。
もったいぶらずに言うと、それは「時差」の問題です。「なぁーんだ。」と思われるかもしれませんが、この点を意識されているお客様は本当に少ないです。しかし時差の問題はなかなかに厄介なのです。どう厄介なのか具体的に見てみましょう。
皆さんは時差と聞くと、イメージするのは欧米諸国ではありませんか。つまり時差とは、日本時間の後、それらの国が同じ時間を迎える。こんなところだと思います。この考え、東南アジア以東であれば正しいと思います。ところが世界には、このイメージと真逆の国があります。
すなわち日本の時間よりも、先に時間が進行している国です。これらの国に送金しようとすると、厄介な問題が出てきます。実際に考えてみましょう。
「シドニー(豪州)へ豪州ドル建ての送金を行う。」この場合はどうでしょうか。シドニーとの時差は1時間です。日本時間の午前9時は、現地の午前10時です。しかも日本の銀行で豪州ドル当日相場が決まるのは、早くても午前11時過ぎです。つまり朝一番に銀行の窓口に行っても、11時までは実際の手続きができません。ようやく手続き開始した時には、すでに現地は正午と言うわけです。
10月になれば先方はサマータイムでさら1時間早くなります。こうなると、当日中の着金はほぼ不可能になります。さらに付け加えれば、オークランドと言う都市があります。この都市があるニュージーランドは、日本との時差が何と3時間。日本の午前9時が、現地では正午です。ニュージーランドドルでの当日着金は、最初から無理筋と言えます。
ここまでお話すれば、たいていの人は当日着金にはこだわらない。翌日に着けば良いではないか。と言われそうです。それも一つの見識で、常識的な線だと思います。が、翌日が銀行休業日だったらどうでしょうか。さらにイースターやクリスマスのように連休になる場合は、送金到着は最も速くて5日後(土日含む)になります。
こんな状況でも、鷹揚に構えていられるでしょうか。私だったら受取人に一言連絡せざるを得ません。
このように一口に時差と言っても、問題の所在は様々です。海外送金を依頼する場合はトラブル回避も兼ねて、時差にも気配りすることをお勧めします。
2017/07/07