冬季の海は氷が張り船の航行をスムーズにするために砕氷船は欠かせないもの。
フィンランド周辺のバルト海でも砕氷船は大活躍中ですが、今年フィンランドの独立100周年を記念して、世界初のLNG(液化天然ガス)を動力源とする砕氷船が初航海しました。
■環境にやさしいディーゼル電気砕氷船
フィンランドの砕氷船の運行サービス等を手がけるArctia社が造船した「ポラリス号」。世界で初めて液化天然ガスを動力とし、燃料に低硫黄ディーゼルもあわせて使用することで、運行中の二酸化炭素量および汚染物質量を削減できる環境に配慮した砕氷船。
氷の摩擦抵抗を最小限に抑え、砕氷能力を最大限に引き出す特別な船体形状と推進装置も備わっています。「フィンランドの貿易は、この砕氷船なくしては成り立ちません。記念すべき年にわれわれが今まで培ってきた設計や建造などのノウハウを集結した砕氷船を航行することができ、とても光栄です」と担当者は語っています。
■長きにわたる高評価の砕氷技術
フィンランドの砕氷技術は、世界中で高く評価されています。北極海と北海航路では、環境規制が厳しくなる中で海上交通が活発化し、高度な砕氷船や氷海を航行するコンテナ船の需要が高まってきています。そのような背景の下、氷技術を専門とするフィンランドのエンジニアリング会社Aker Arctic Technology(AARC)は、高度な北極船や海上ソリューション開発において世界的なリーダーとして活躍してきました。
「あらゆるインフラから遠く離れたマイナス30度以下の気候環境下で活動するためには、高度な技術が求められています」と担当者は話しています。こうしたパートナーと専門知識を共有することで、50年以上にもわたる砕氷船の技術と経験を積んできました。
造船所は世界で最も多く砕氷船を造船しているといわれるヘルシンキ造船所。さまざまな分野のベテランや専門家たちがこのポラリス号に関わりました。
ちなみにヨーロッパ初の砕氷船は、フィンランド湾内のクロンシュタット港で造船された砕氷型の船首を備えた蒸気機関を動力とする曳航船だったとか。
■冬のバルト海で活躍
ポラリス号の主な任務はバルト海での砕氷。冬期にバルト海に入出港する船舶を支援します。また一年を通じて外洋での油流出対応作業や緊急時の曳航および救助作業も支援します。
凍結はまず10月末から11月初旬にかけて、フィンランドとスウェーデンの間のボスニア湾に始まり、1月末から2月にかけてはフィンランド南部のフィンランド湾に達します。まさに今がポラリス号の活躍時です。
そのバルト海は、氷河期の反動で地盤が隆起している(アイソスタシー現象)との科学的な証拠があり、現在でも数ミリメートル単位で隆起が続いているとのこと。特に今のところ航行には影響はないようですが、興味深いですね。
実際にポラリス号を目にすることはありませんが、海上交通における縁の下の力持ちとして今後大活躍することでしょう。
2017/3/6